きもの春秋10
  帯の組み合わせ

 きもののおしゃれは、きものと帯の合わせ方一つに掛かっていると言っても過言ではない。自分に合うきものを選び、好きな帯を選んでもチグハグな組み合わせであれば、どんなに高価ですばらしいきものを着ようとも、どんなすばらしい帯を結ぼうとも、その組み合わせ一つ間違えればやぼになってしまう。やぼな組み合わせであれば、帯締めや帯揚げをいくら工夫してもよくない。きものと帯というただ二つの要素でその人のセンスが決まってしまうのだから、単純なだけに難しいのである。
 そんな難しいきものと帯の組み合わせであるが、案外おろそかにされている場合が少なくない。お茶会にいってみると、何故そのきものにその帯を、と思えるような人を見掛ける。ここで言うきものと帯の組み合わせと言うのは、その色の組み合わせの意味ではない。色の組み合わせは、人それぞれの個性であり、十人十色で構わない。万人の目にセンス良く映れば、その人は色のセンスが良く、又反対に他人の目に良く映らなければその人はセンスが悪い、と只それだけのことである。問題はそれ以前である。きものの種類は沢山あり、帯の種類も沢山ある。それぞれに格が決まっていて、その格にふさわしいもの同士しか合わせることはできない。しかし、時折、染めの訪問着に紬の帯といったチグハグな組み合わせを見掛ける。何故このような事が起こるのであろうか。
 その原因は、きものが縁遠くなった事と、形は同じというきものの原則があるために、どの帯が格のある帯なのかが分からないためではないかと思う。初めてきものを見る人にとっては、どんなきものも同じに見えるし、どんな帯も同じ帯に見えてしまうのである。
 普段着ている洋服であれば、どれがフォーマルでどれがカジュアルなのかは見分けがつくし、形もいろいろあるだけに容易に判断することができる。ジーンズが式服になると思う人はいないし、ワンピースの上にスカートをはこうとする人はいないだろう。和服はきものと帯の組み合わせという単純さにその難しさがある。
 きものに留袖から紬まで種類があるように帯にもいろいろな種類がある。形態からいえば、丸帯、袋帯、名古屋帯、半幅帯がある。
 丸帯は一尺八寸(68センチ)幅に織りを半分に折って仕立てるので両面全てに柄が有る帯である。京都の舞子さんの帯がこの丸帯であるが、最近は一般には振袖用に少量生産されているだけで、ほとんど作られていない。格式の最も高い帯なので式服以外には用いられない。
 半幅帯は文字通り半幅(四寸、約15センチ)で仕立てられた帯で、太鼓は作らないので他の帯とは区別がつき、袴を着用する時以外は普段着に使われる。ゆかたの時に締める帯も単衣の半幅帯である。
 今、きものを着る時に最も使われるのは袋帯と名古屋帯である。袋帯と名古屋帯の大きな違いは、着用するときに袋帯は二重太鼓、名古屋帯は一重太鼓で締めるという事である。
 袋帯は二重太鼓で締めるので袋帯は長さが丸帯と同じ一丈八寸(409センチ)ある。袋帯という名称は表と裏の生地が有り、袋状になっているところから来ている。裏と表の縫目のない本袋帯と二枚の布を縫い合わせた仕立袋帯があるが、最近は仕立て袋帯が多くなっている。
 名古屋帯は一重太鼓で締めるので、袋帯よりも短く、長さは九尺四寸(360センチ)ある。形態によって八寸名古屋帯と九寸名古屋帯とがある。
 八寸名古屋帯は文字通り八寸幅で織られていて、垂れを三尺折り返してかがり仕立てをするだけで締められる。八寸綴帯、紬八寸、博多献上帯があり、綴帯以外は普段着用に用いられる。
 九寸名古屋帯は九寸幅で織られていて、八寸名古屋帯と違って、裏に芯を必要として、両脇を五分ずつ折り込んで八寸に仕立てる。九寸名古屋帯(以後九寸と呼ぶ)には織帯と染帯がある。織りの帯地には唐織りや緞子があり、色無地や付下等比較的格の高いきものにも合わせることができる。染帯には塩瀬、縮緬、紬地が使われる。塩瀬は柄の重いものは付下にも用いられるが普通、色無地、小紋、紬に合わせられる。縮緬はややくだけて小紋、紬に、紬の染帯は紬、ウールにそれぞれ合わせられる。
 きものや帯に格があるのは前述した通りだけれども、その組み合わせによって全体の格が変わってしまう。例えば小紋を着る場合は(格の)軽い袋帯、織名古屋帯、塩瀬染帯、縮緬染帯、紬名古屋帯を合わせることができる。小紋にも染によって格式の高いものから普段着にしかならないものまであるので一概には言えないけれども、織名古屋帯を合わせた場合と、塩瀬染帯、縮緬染帯を合わせた場合はおのずからその格が変わってくるのである。
 色無地の場合も、結婚披露宴に出る時、お茶会に招かれる時、お茶会の手伝いをする時では帯を変えてその場に対応しなければならない。最近は普段着のきものが少なくなったせいか、それとも何本も帯を揃えることができなくなったせいなのか、何でもかんでも袋帯をしている人がいる。若い人が振袖用の袋帯を色無地に締めて茶会の半東をしている姿を目にする。半東さんのような控え目な役柄であれば名古屋帯の方がしっくり来ると思うのであるがどうだろうか。
 お茶を習っているお客様に名古屋帯を勧めたことがあった。すると、
「先生からは袋帯を締めてくるように言われた。」
と言う事だった。お茶の世界を良く知らない私であるが、何でもかんでも袋帯というのはいかがなものであろうか。
 小学生や中学生が学校指定の体育着(いわゆるジャージー)で遊んでいる子供たちを良く見掛ける。学校指定の服装なので、先生や親にとがめられる事はない。可も無し不可も無しといったところだろう。しかし、可も無し不可も無しではとてもおしゃれとは言えない。おしゃれとは言えないどころか、おしゃれ感覚の麻痺した個性のない人間としか思えないのである。本当のおしゃれは、その場にあった最も個性を発散できる装いをすることではないかと思う。
 きものと帯の組み合わせをもう一度考えてみてはいかがだろうか。