平成20年8月10日

西陣の証紙が変わりました

 西陣織工業組合では、従来より組合員の製品に証紙を貼り、その品質を保持してきました。(従来の左側の証紙)
 左側の丸の下には登録された織屋の識別番号が記されています。右側の丸には「正絹」と記され、この製品が正絹(絹100%)であることを証明していました。もっとも、この基準には例外規定があり、「本金は正絹とみなす」ことになっていました。つまり、金糸や金箔を使った場合、正確にいえば絹100%ではないのですが 絹とみなして「正絹」の証紙を添付しておりました。
 しかし、今年(平成20年)4月出荷分から右のような新しい証紙に変わりました。新しい証紙では、織屋の番号は右側に記載されています。従来「正絹」と記載されていた処に「西陣織」と書かれています。
  新しい証紙は、材質を保証するものではなく、西陣織工業組合の組合員が国内で織ったことを証しています。
 従来の品質表示については、各織屋が責任を持って表示することになりました。表示の形式は織屋によって違いますが、材質は厳格に表示しなければなりません。
 渡文株式会社(織屋番号37)の紬八寸帯には、下段左のような表示があります。
 滋賀喜織物株式会社(織屋番号55) の八寸帯には下段右のような表示があります。これらは、品質表示の厳格さを要求する
最近の流れに乗ったものと思われます。
 品質表示の厳格化は消費者にとって判断する基準が明確化されることで有益ですが、両刃の刃であることも忘れてはなりません。以下、これについて若干考えてみます。

  

従来の証紙

新しい証紙

新しく義務付けられた、織屋ごとの品質表示

 最近の「原産国表示」や「賞味期限表示」など、品質の不当表示が話題となり、より厳格な品質表示が求められていることはニュースにも度々報道されています。
 きものに関する品質表示についても「きものトピックス8.京友禅証紙」でも語ったように、さまざまな証紙が創られてきましたが、その多くが済し崩し的に権威を失ってきました。しかし、西陣織工業組合のめがね型証紙は権威を保ち続けてきたように思えます。
 その裏には組合の人達の並々ならぬ努力があったと思います。
 「組合員以外には使わせない」「組合員bカットしない」「証紙をはずしたり、他の証紙にはりかえない」などの規定を守りながら自らの織る帯に誇りを持ってきた証と言えます。
 しかし、ここで従来の証紙から厳格な品質表示に変えることはかえって混乱を招く恐れもありそうです。
 正絹の帯は正絹で織られています。当たり前の話ですが、従来の表示では前述したように例外規定があり「正絹」の表示であっても必ずしも「絹100%」を意味しませんでした。
 帯地には物により正絹だけで織られているわけではありません。金糸銀糸、金箔銀箔、場合によっては紙など、それらはもちろん悪意からではなく、その作品を織るための大事な材料として織り込まれるものです。
 例えば写真下段右の滋賀喜織物の八寸帯の品質表示には、「ポリエステル、レーヨン(金銀糸風)5%」とあります。一方、渡文の帯は「絹100%」です。 どちらも昔から織られている帯で、商品的にも何も問題なく広く締められています。
 しかし、 「ポリエステル、レーヨン(金銀糸風)5%」という表示は消費者にどのように受け取られるのでしょうか。
 「正絹ではない」という見方が実質的な品質を見誤ることはないのでしょうか。そして、「絹」という表示にはそれ以上の説明はなされていません。一口に「絹」といっても、「本絹」と呼ばれるものから、「絹紡糸」「酢蚕糸」と呼ばれるものもあります。
 博多織工業組合では、絹の種類を表すために、金、緑、紫の三色の証紙を使っています。これは消費者にとってわかりやすい表示ですが、「絹100%」とだけ記された場合、どんな絹が使われているのかはわかりません。
 昨今の呉服業界ですから、次のような商法が出てこないとも限りません。
 「
この帯はポリエステルやレーヨンの交織ですが、巷では十万円で売られています。しかし、こちらの帯は正真正銘の正絹、絹100%の帯です。価格は十五万円です。交織に比べれば安いでしょう。」
 ここで売られている正絹の帯は安価な絹紡糸ということも考えられます。
 消費者が証紙に表わされている真の意味を解しなければ、品質表示の問題はどこまでいっても尽きることはないように思えます。

 

 

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