きもの博物館13
  手描友禅付下

「手描友禅」というのは、その名の通り手描の友禅である。このような断わりを書かなくてはならないのは、手描ではない友禅が増えてきたからに他ならない。
 手描ではない友禅とは何かと言えば、多くの人は型友禅を想像するかも知れない。しかし、型友禅と手描友禅とは一目でその違いが分かり、わざわざ「手描」と断る必要もないのである。実は近年、「型糸目」という新しい技術が発達してきたのである。
 友禅染は元禄時代に宮崎友禅斎によって創案されたという染色法で、糊置防染法という手法が使われる。生地に染料を置けば、染料が滲んで絵にはならない。そこで、色を染める形の縁をぬり絵の下絵のように糊で囲んでいくのである。糊で囲われた内側に染料を刺せば色は外に滲み出さずに絵を描けるという訳である。繊細な絵を描くためには生地に糊で細い線を引かなくてはならない。糸目糊を引くのは当然手仕事となり、いかに細く、そして一様に同じ太さで糸目を引くかが職人の腕の見せ所となる。職人は糸目糊を刺す金口を工夫しながら、その技術を競い合ってきた。しかし、「型糸目」と呼ばれる技術は、この糸目を一気に型で入れてしまうのである。初期の型糸目(10〜15年前)の技術はまだ稚拙で、ふとい糸目しか引けなかったけれども最近は手描きと見まがうような細い型糸目も出てきて、その技術には感心してしまう。
 しかし、型物は手描きの良さを越えることはできない。手描きの持つ良さは、作品に人間の感性が感じられるのである。熟練職人に引かれた細く一様な糸目にはわずかな誤差がある。型糸目には真似のできない感性である。型糸目はきれい過ぎると言っても良い。完璧なものに人間的感性は感じられない。人間の造るわずかな誤差に物の良さが感じられるのである。