9.輪奈織、ビロード織について  
 着物や帯を見ているうちに、いくつもの「?」が出て来ています。 教えて頂きたいのですが、輪奈織りとビロード織りは同じものでしょうか。又、モール帯(金華山織り?)との違いはあるのでしょうか。
  一昨年でしたか、ある呉服売り場で「輪奈織りがこの値段では、とても出ません」と勧められました。けれど後日、別の呉服屋さんが言われるのには「30万以下では出ません、偽物でしょう。」 この「偽物」とはどういう意味で言われたのかも、分からないのです。よろしくお願い致します。

 輪奈織とビロード織はともに添毛織と呼ばれるものです。この添毛織というのは表面を毛羽立たせた織物で、上記のほか別珍、コール天、タオルなどがあります。
  輪奈とビロードの違いはその製法にあります。輪奈織は鋼線を経糸で包むようにして織り上げ、後に鋼線を抜いてループ状に毛羽立たせたものです。ビロードのように仕上げる時には鋼線の上からループを切って毛羽立たせます。
  一方、ビロードは上下二枚を一緒に織って、一部の縦糸を上下に絡ませて織りあがったら二つに切って毛羽立たせます。(下手な添付画像参照)
  輪奈織やビロードは経糸で毛羽立たせるので経毛組織と言われています。別珍やコール天は緯糸で毛羽立たせるので緯毛組織と言われています。別珍は輪奈織のように鋼線は使わず繻子のように緯糸を浮かせて織りあがった後切り裂いて毛羽立たせます。
  コール天が縦に筋が入るのは横糸で毛羽立たせるためです。 昔織られていたモール織というのは繻珍(繻子織の複雑なもの)だと聞いていますが、現物を見たことがないので良く分かりません。
  ご質問のモール帯と言うのは伊豆蔵昭彦さんの「ひなや」が織っている金モール帯の事を言っているのだと思います。この金モール帯は輪奈織と同じように鋼線を使って織ります。
  伊豆蔵さんの説明ではローマ法王が纏っていたものだということですから、そうなのでしょう。ただ、金華山織というのは前述の繻珍だ思うのですが、その辺のことは分かりません。
  金モール帯は輪奈織と同じ思ってよいかと思います。
 
「30万以下は偽物」ということは全くありません。ご存知のように呉服に上代設定はなされてないので価格は店によりまちまちです。30万円以下で本物の輪奈コート地を売っている店はたくさんあるはずです。
  当社もそうです。まして昨今の呉服業界は大手問屋の倒産や小売屋の倒産、メーカーの廃業など、どんな商品がどんな値段で出てきてもおかしくは無いという状況です。いわゆるバッタ商品で出回ることもあります。
  もっともいくら本物の輪奈ビロードであっても、長期退蔵品であったり事故品であったりすることもありますから、極端に安いものはそのへんを考慮しなければなりません。
  「偽物」というのは物事を否定するのに都合の良い言葉のようです。偽物と聞けば質の悪いまがい物という印象を受けますから。秋田黄八丈は本場黄八丈を真似た物、米琉は琉球絣を真似た物です。悪意にとれば本場黄八丈の偽物、琉球のまがい物と言えるわけですが、そうとばかりは言えない面があります。
  「偽物の輪奈コート」は私が京都にいた二十年前にも出回っていました。本物の輪奈コートほど巻きが太くなく、手触りも違っていたような気がします。しかし、値段はそれなりでしたし、粗悪品というには程遠かったように思います。
  高価な手間のかかる輪奈コートを工夫して安価に創ったものかもしれません。もしも、呉服屋がきちんと説明して適正な値段で販売するのであれば、問題は無いと思います。問題は呉服屋が知らずに売ったり、故意に本物に見せかけようとする場合です。  
  高いものは良いものという流言に惑わされず、安いものはお買い得という飛語に踊らされずに、自分の目で見て判断して、その商品がその価格で価値のあるものなのかどうかを判断していただきたいと思います。
  呉服屋は私を含めてうそつきが多いですから。 消費者に適正な判断をしていただければ、業界は良くなると思っています。

 とても丁寧なご説明を、ありがとうございます。
  違いは良く判りました。ただ私の書き方が悪く、その輪奈織りと言いますのは帯の事だったのです。従って毛羽立たせず、輪になったままの織り方になっています。 となるとご説明の中の、「ひなやさんの金モール帯」と同じ様な帯なのかと思うのですが。もしかするとその呉服屋さんは、そんな意味で言われたのかも、とも考えてしまいました。
  しかし「自分の目で見た判断」とは、ゆうきくんには簡単かも知れませんが、非常に難しい事です。判断するには良いものを数多く見、見る目を養わなければならないからです。 田舎町に住んでいますと、良いものを見る機会も品数も少ないのです。でもせっせと呉服売り場や、(少々敷居の高い)呉服屋さんなどに通い、少しでも見る目を養いたいと思っています。
  旅さんやゆうきくんのお話も、良い参考にさせて頂きます。 まだまだ幾つかの「?」がありますので、よろしくお願い致します。
 ひなやの金モール帯は伊豆蔵昭彦さんが最初に織った帯です。
  最も高価なもので100万円前後です。これは紋丈(一柄の長さ)の長いものですので容易に見分けがつくと思います。通常のもので5〜60万円というところでしょう。
  しかし、これらは「ひなや」ブランドのものなので価値があるかどうかはご自分で判断されたら良いかと思います。また、ひなやでは廉価版の金モール帯も作られています。大阪の量販店「愛染蔵」さんで盛んに売られていますが、こちらは20万円前後と言ったところでしょう。
  何が違うかと言えば、鋼線を太くしてループの数を減らすなど手間を省いて創っているものです。かならずしもそれは「偽物」にはあたりませんが、価格相応のものでしょう。また、市田で出している花井幸子のコレクションにも金モールの帯があります。これは、じゅらくで織られているようです。
  他にもひなやの金モールを真似た商品が織られているという話も聞きますが、価格がいくらぐらいなのかはわかりません。ひなやの金モール帯はブランド料が上乗せされているようにも思えますが、商品を見て判断されたら良いでしょう。
 おっしゃるとおり、きものは置くが深く、簡単に見る目を養えるわけではないかもしれません。しかし、私が消費者にお願いしたいのは、目を曇らせようとする呉服屋の言いなりになってはいけないと言うことです。
  全ての呉服屋がそうなのではありませんが、今の呉服屋の多くは商品よりも売り方、すなわち如何にして売るかという事にばかり気を取られているのです。(続きもの春秋、16.業界が怠ってきたことhttp://www.ykya.co.jp/zksj/16gyokai.htm参照)
  過度な接待や派手な展示会、景品、度重なる勧誘など、商品はそっちのけで販売ばかりを考えている呉服屋が多いことを頭に入れて置いてください。かさむ経費は全て価格に上乗せというのが現状です。
  ある消費者向けの展示会で(私が思う)適正価格の4倍の値段も見かけたことがあります。
  きものを買う場合、次のようなことをしていただきたいのです。
  信頼できる呉服屋が無い場合、自分が欲しい商品に焦点をあてて、より多くの呉服店を回ることです。たまには派手な展示会に行くのも良いでしょう。商品を絞って観察すれば価格がどれほど違うのかわかっていただけるはずです。
  過度な接待を受けたからといってなびかずに冷静に判断して下さい。自分が納得できるまで探してください。価格については当社のホームページ「購買部」も参考にしてください。当社は当たり前のルートで仕入れ、当たり前の掛け率で価格を設定しています。もしかしたら、仕入れの巧さで当社よりも安い価格もあるでしょう。目安として参考にしていただければ幸いです。

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