16.防汚加工について、どう思いますか   
 正確な製品名は言わないけれど、いわゆる「防汚加工」をどう考えていますか?

 「防汚加工」というのはパールトーンやスコッチガードのことでしょうか。
 当社ではこのような加工はお客様に頼まれれば加工をしていますが、積極的に薦めてはおりません。それは次のような二つの理由からです。
  まず第一には正絹の生地に対して物理的な問題が無いのかということです。
  絹糸をコーティングして汚れから守るというのは絹に対してどのような影響があるのか。生きているものを窒息させはしないのか。絹の風合いは保たれるのか。加工を施した物が汚れるとかえって厄介だという話も聞いたことがあります。
  科学技術は両刃の刃という感は拭い去れません。加工を施すことが生地に対してどう影響するか責任が持てません。しかし、加工されたものを実験で試したわけではありませんし、経年変化を追跡調査したわけでもありませんから、自信をもつて否定する訳にも行かないのです。
    もう一点は、私のきものに対する情緒的立場からの懸念です。 汚れずメンテナンスの楽なきものというのは、化繊のきものも含めてきものを着る者にとっては大変魅力的だと思います。まして絹のきものが雨や泥はねといった災害?から守られるとなれば誰でも関心を抱くことでしょう。
  日本のきものには「汚れることを前提としていない」という伝統があるように思われます。汚れる所にはそれなりの工夫もしてあります。半襟や掛け衿など、また八掛や袖口布なども広い意味ではきもの本体を汚れや破れから守る為のものと私は思っています。
  「きものは汚してはならないもの」という意識がきもの姿の人を日本的な振る舞いに仕立て上げていると思います。
 
ジーパンをはいた若い女性が水溜りをはねる姿を見かけます。それはそれで絵になります。女性によってはボーイッシュな雰囲気が彼女を魅力的にすることさえあります。
  しかし、同じ女性がきものを着て水溜りを避けて裾を気にしながら歩く姿は実に日本的な雰囲気を感じさせてくれます。きものを着た女性が水溜りをはねる姿は考えられません。
  防汚加工を施したきものを着ている人は「きものが汚れても構わない」と思ってはいないと思います。しかし、心のどこかで「きものは汚してはならない」という気持ちが否定されはしないかと心配しています。

 私も最近この防汚加工について色々考えていました。
  ちょっと前にとても気に入って買った白い名古屋帯。 着物初心者ということもあり買うときに加工をお願いしたのですが ”風合いが変わってしまうからお勧めできない。 だからうちでは加工はしていない”と言われ、 私もそのときは納得し、そのまま仕立ててもらいました。
  でも汚れるのが怖くてまだ使っていないんです。(貧乏性…) 別の店で加工してもらって安心して着たほうがいいのかな… そんなことを考えていた矢先こちらを拝読しました。
  今、目の前の霧が晴れたようにすっきりとした気持ちです。 もし汚れたとしても、きっとあのご主人は きっと染みを落としてくれるだろう、と思いました。 帯前が汚れたら反対側の柄を出して使おう、 お太鼓は汚れないようにコートや羽織を着よう。 (コートや羽織の季節以外使わないことになるかもしれませんが) そんな風に考えられるようになりました。 白い帯、汚れるのも怖いけど風合いを楽しむ・ 汚れない動作・汚さない努力を必要とする帯として あえて加工せずそのまま使おうと思います。
  安易に加工せずによかった。 今そう思います。 どうもありがとうございました。

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