116.久米島紬
 久米島紬について教えて頂きたいことがあります。
 久米島紬が重要無形文化財になりますが、結城紬を参考に今後のことを想像して思うことなのですが、結城紬は重要無形文化財の証紙や「結」マークのついたものと、そうでないマークで言えば「紬」のついたものでハッキリ分類されていますよね。
  現在、久米島紬は、『伝統工芸品』の指定を受けていますが、その「伝」のマークのついていないものは重要無形文化財にはならないのはわかるのですが、「伝」マークのついているものは全て重要無形文化財に相当するものになるのでしょうか?
  たまたまその記事が新聞に載った後、久米島紬を目にする機会が何度かあり、その価格設定に疑問を感じてしまいました。 「伝」マークがついている久米島紬ですが、店によって価格があまりにも違うのです。(店の規模他によってそれぞれ価格設定が違うのは承知しています)
  相対的に高いと評判のお店の価格と良心的な価格設定のお店の価格で、先のお店の方が安いのです。 それも10万以上も。 疑問に思い、良心的な価格設定のお店に店間の比較ではなく、一般論として尋ねたところ、現在「伝」マークがついているものの中には、この先重要無形文化財の条件になるであろう工程をクリアしているものとそうでないものがあり、縦横絣のものでも安価(と言っても何十万ですが)で売られているものは、たとえ「伝」マークがついていてもその製法のものは、「重要無形文化財」にはならないもので、その対象になるような本来の製法を守って作られたものは今現在最低でも50万前後以上はすると言われたのですが、実際のところはどうなのでしょうか。
  その話を聞いてふと思ったのですが、結城には「伝」マークなんてありませんよね。 では重要無形文化財の証紙が発行された暁には、久米島紬の「伝」マークは廃止されるのでしょうか。
  まだ何も決まっていない中で、証紙のこともどういったものが対象になるかもわからないとは思いますし、想像の範囲になる部分もあると思いますが、現在の久米島紬の分類と価格について教えて頂けないでしょうか。
  ちなみに話の中で出た分類は、縦横絣の工程のきちんとしたもの、そうでないもの、縞や横絣のものというランク分けでした。
  その分類を聞きながら、大島のように、縦横絣の手織りのもの、縦横絣でも半自動の織機織のもの、緯そうや縞の織機織を想像したのですが。。。 よろしくお願い致します。

 かすみ草さんのご質問は、久米島紬にとどまらず、現在呉服業界が抱える問題を多く含んでいますので、区切ってお答えいたします。
  「伝」マークについて
 「伝」マーク(貼付画像参照、このマークのことですよね)は通産大臣指定(現在は経済産業大臣)の伝統工芸品に付されるマークです。その条件は、
 ・ 主として日常生活の用に供されるもの
 ・ 製造過程の主要部分が手工業的であること
  ・ 伝統的技術または技法によって製造されるものである事
  ・ 伝統的に使用されてきた原材料である事
 
・ 一定地域で産地を形成している事
となっています。ですから重要無形文化財とは違ったものです。 証紙について  「伝」マークにしても、結城の「結」や「紬」、西陣織工業組合の証紙にしても、ある団体がそれを認定しているということを覚えておいてください。
  ある団体とは、国の指定機関であったり、伝統ある団体である場合もあります。任意団体の場合もあります。それらの機関が認定した証紙がどれだけ権威のある物なのかは冷静に判断しなければなりません。
  結城紬の重要無形文化財指定の証紙は権威ある証紙ですが、これは結城紬技術保存会が認定しているもので、他の紬や重要無形文化財との相関関係はありません。この認定を受けるためには大変な手間とコストがかかるために良い物を安く造るという立場から初めから認定申請をしない動きもあるようです。
  西陣では中国製の帯が氾濫していることから一部の団体で「手織りの証」が創られましたが、同じような物が出回ったり、そのものの信頼がうすれたりしているので今年の7月に西陣織協同組合で統一した「手織りの証」が発行されることになりましたが、どれだけ信頼を得られるのか疑問視する向きもあるようです。
  証紙はあくまでもそれを発行する機関が認めるものですので、それをどう解釈するかは解釈する側の問題かもしれません。
  価格について
 呉服の価格については、他の業界に誇れるようなものではない事は業界の人間として恥ずかしく思います。
  電気製品その他のように、参考上代価格があって販売価格を競うという構図にはなっていません。おっしゃる通り、高い店、安い店がありそれぞれが成り立っているという状態です。
   販売価格はその店の掛け率にもよりますが、仕入先によっても変ってきます。一般に安い掛け率の店でも仕入先がもう一件問屋を通している場合などは高くなってしまいます。ですから、同じ物でも一般に安い店が一般に高い店よりも高くなるという可能性はあります。(久米島紬かそのケースかどうかは分かりませんが。)
  もっと、仕入先を選別するなど価格に対するこだわりがあっても良さそうなものですが、呉服業界では余り拘っていないのが現状です。恥ずかしい話です。
 ですから価格については証紙云々の前に他の要素が多いので、おっしゃっている紬がどうなのかは現物を見て見なくては分かりません。
  久米島紬について
 久米島紬は十五年くらい前に私の店でも盛んに扱いました。久米島へ行き、工場も見てきましたが、現在は状況が相当変っているようです。
  これは呉服一般にいえることで、十五年という短いスパンの間に様変わりとなったものが多くあります。大島紬も生産体制や価格など以前とはまるで変ってしまいました。(この辺の事情は旅から旅さんに聞けば詳しいでしょう。)
  私が見てきた工場も今は閉鎖してるとも聞きますし、流通体制も変っているようです。
  最近、久米島紬を扱っていませんので最近の事情は良く分かりません。少々時間をください。その小売り屋さんが言われた事が本当なのかどうか調べてみます。久米島紬の織屋は数件だと思いますので調べれば話は簡単なのですが、それだけに扱っている(織屋と取引している)問屋は少ないので、ちょっと時間がかかるかもしれません。
 長々と書いて、本題にはお答えしていない様で申しわけありませんが、少々お待ちください。

  「伝」マークと重要無形文化財の違い、またいろんな証紙の権威と信憑性(偽物が出回ることを含む)について理解しているつもりです。
  重要無形文化財の結城については、認定を受けるためのコストや手間の問題から証紙なしの本結城が存在する話も、行きつけの呉服屋さんから聞いています。 価格についても、間に問屋が何軒入るかでその価格も上がってくると聞いています。
  ゆうきくんの詳しい説明に自分の知識を再確認しつつ読ませて頂きました。 久米島紬についてお調べ頂けるとのこと。 お忙しいところご迷惑をおかけしますが、どうぞよろしくお願い致します。
  あと、いろいろ調べている内に気がついたことなのですが、重要無形文化財というのは、伝統工芸士に認定されていない人の作品でも認定されるものなのでしょうか?
  加えてご回答頂けると嬉しいです。
 伝統工芸士の制度は通産省(現、経済産業省)の管轄で認定されています。資格制度があって、試験に合格した者に伝統工芸士の称号が与えられます。通産省管轄ですから、伝統産業の発展、育成を旨としたもののようです。
 一方、無形文化財(人間国宝)は文部省(現、文部科学省)が認定するものです。文化財保護の立場から文化財保護法の則り文部科学大臣が認定します。
 伝統工芸士と人間国宝の整合性についてですが、直接は関係ないと思います。今の縦割り行政の官僚機構から言って、他の省庁の制度を認定の判断に用いているでしょうか
  。私は分かりませんが、表立って考慮することはないと思います。それでも、どちらもすばらしい技術を持った人ですから、重複することは十中八九あるでしょうけれども。
 重要無形文化財についてですが、人間国宝の意味ではなく、品物のことでした。 具体的に言いますと、重要無形文化財の本結城は伝統工芸士の作品に限定されるのか、そうでない一般(という表現は変ですが)の織工さんの織ったものでも重要無形文化財になるのかどうかという質問でした。
  結城に関しては、糸や工程の規定を満たしておれば良いので、伝統工芸士でなくても条件をクリアしていれば重要無形文化財の品になるのだと思うのですが。
  お尋ねした久米島紬にも通じるのですが、その場合、図案(ありえないかもしれませんが)をはじめ、全ての条件が同じだったとして、織工さんが伝統工芸しかそうでないかで価格は違ってくるのでしょうか。
  説明がへたくそですみません。
  重要無形文化財の本場結城は必ず伝統工芸士の手で造られているのか?というご質問ですね。
 私は結城紬や久米島紬の生産に直接携わっているわけではありませんので、正確なことはわかりません。以下は私の考えとして受け取ってください。
 結城紬や久米島紬などの織物(西陣も含めて)は非常に多くの生産工程を経て織り上げられます。糸を紡ぐ人、括る人、染める人、織る人、その他目立たない工程でも専門的で創造的な技術を要する工程を受け持っている人たちがたくさんいます。結城には100人以上の伝統工芸士がいますが、全ての工程で伝統工芸士の称号をもつ人が携わっているとは思えません。伝統工芸士の家族の方もいっしょに仕事をしていると思うからです。
 仮に織手に限って言えば把握する事は可能でしょうが、全ての工程を考えればどうなのでしょうか。
 二つ目のご質問で、伝統工芸士が織ったものは高くなるのかについて。
 伝統工芸士は社会的に認められた資格ですので、製造原価に響くことは間違いないでしょう。しかし、それが目立って、いわゆる作家物のような値段を呈するかというば疑問です。前述したように織物は多くの工程を経ますので、織り手の仕事は重要な部分を占めるとは言え、全体から見れば一部といえます。もっとも職工さんはそれほど高い賃金で働いてはいないので、伝統工芸士の作品イコール高価というほどまではいかないと思います。
  もしも、織り手を作家として高額になっているとしたならば、流通過程での操作という気がします。
 以上、私の主観ですので必ずしも当っていないかもしれません。正確な所はそれぞれの組合に聞いてみては如何でしょうか。
 全てにそうとは限らないと思いますが、呉服屋さんによっては、
「この反物は伝統工芸士である誰ソレが織ったものです」
といった説明をするものがあります。展示会などではご自身が売り場に来られてアピールに努めていることもあります。 織、染め、絞りなどがあり、原料工程としては、上布の苧麻を縒る方が誰ソレだったというのもありました。 「伝統工芸士の作ったものが欲しい」というのであれば、そういう素性のはっきりした物を買い求めるのが良いかと。
  無形文化財も同様で、その技を伝承されている誰ソレの技による、と大抵売り口上するものです。そうでない場合は、保証がないと思って良いのではないかと。 値段が上がるかどうかはともかく、そういう口上は「売りやすい」「買う気になる」という状態にはあるようです。

 伝統工芸士の作ったものが欲しいというわけではなく、伝統工芸士の商品における意味合いや価値がどうなんだろうと疑問に思っただけです。

 仰るように、一種の保証にはなりますね。 そしてまた、その保証で買う気にもなるかもしれません。 価格で価値ははかれないのはわかっていますが、知識や見る目がおぼつかないと、ふと気付くとついつい価格で判断しかかっている自分を発見してしまいます。 買ってはいけない!ということなのでしょうね。。。

 私自身の中では、作家と伝統工芸士は別だと判断してはいるのですが、帯には伝統工芸士誰それと名前を織り込んでいるものをよく目にしますので、多少は価格にも反映しているのかなぁという気はします。 仰るとおり伝統工芸士であっても、職工さんの賃金というのはそれほど極端に変わったりはしないでしょうね。

 他の件で過去に何度か当該組合にメールを送ったことがあるのですが、組合と称するところからお返事を頂けたことがありません。
  もう少し自分でも調べたりしながら、また問い合わせること&問い合わせ方も考えてみます。

 久米島紬を取り扱っている問屋に聞いてみました。やはり、色々な問題を抱えているようです。
  結城と同じように組合で品質管理をしていますが、これも結城と同じで、検査を通し証紙をもらうのに費用がかかるので検査を通さない物もあるようです。しかし、その機は、品質は間違いないと胸をはっているそうです。
 価格は(当店ベースで)38〜60万円位です。60万円というのは極わずかで、ほとんどが40万円前後のようです。価格の違いは絣の細かさなどによるものと思います。
 表記の「この先、重要無形文化財〜云々」については分かりません。機の数も少なく、それぞれがそれぞれの思いで本気で取り組んでいるようにも思われますので、それほど品質に違いが出るとも思えないのですが、本当のところは現地の人に聞かなければ分かりません。

 いろいろとありがとうございました。 価格の違いは絣の細かさなどによるものだそうですが、結城の何亀甲とか、大島の何マルキというような、消費者にもわかり易い?基準が出るのでしょうか。
  問い合わせることも含め、アンテナを張っていたいと思います。 本当にありがとうございました。

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