168.教えて下さい!   

 日本伝統の着物について、なかなか情報がありませんが、「ゆうきくん」のサイトに出会い、また素晴らしい内容の深さに感動です!ゆうきくんご自身が素晴らしい芸術家ですね。
  質問させていただきますが「○屋○○」先生について教えてください。
  実は知人から購入の機会があるのですが、同じ「○屋○○」の着物で二つの選択肢があります。
1.一つは【辻が花】(全体が絞りになっており、淡い綺麗な色調)で「○屋○○」 ※烙印+名入りのもの。
2.もう一つは織りを聞いて忘れてしまったのですが説明させてください。 (中国風の織り?と聞いたような?) 2枚重ねになっており、下の生地が華やかな朱色系、 上生地が多少抑えたブルー系。生地全体にドット風穴(約1〜1,5mm)の織り。 (そのドット部から下地の朱色がうっすらと見える感じ) しかも驚いたことにその小さな織りドット(朱色が見える部分)に金糸で×に止めてあります。 (近づかないとわからないほど細かな仕事で驚きました。) 柄ゆきはお花柄で全体柄ではありませんが、下部・袖部にどちらかというと控えめな華模様(一部刺繍)。 ※但し烙印と名入りなし。です
  着物に関して知識がない為、同じ作者の品で落款アリ、ナシ。 はどのような違いがあるのか是非知りたいと思います。
  知人に聞くと購入金額は、烙印なしの2.のほうが約100万は高かったようです。 上記1.2.のどちらかを譲って貰う予定ですが、着物本来のものとして、どちらが価値があるのか??と思っております。
  片や辻が花の烙印+名入り。型や○で上代は烙印+名入りがなくても100万高い・・・ 実は好みとしては辻が花に分配が上がっているのですが、どちらも同じ値段でよいと言われると・・・つい上代の高いものがお得なのか?と あさはかにも(お恥ずかしながら・・)考えてしまいます。
  着物と言っても似合う年代もあり、先々年齢が行った時に、それこそ御社様などに 買取相談をするときの価値まで考慮して今回選択したいと考えております。
  長々と書いて恐縮ですが、何卒宜しくお願い致します。

(質問者の希望で作家名は伏せてあります)

 申し訳ありませんが、私の勉強不足でしょうか「○屋○○」という作家は知りません。
 作品を見たことがあるのかもしれませんが、名前は分かりません。
 私は商品を仕入れるのに莫大な枚数の作品を目にしますが、進んで作家名を覚えようとは思っていません。しかし、印象に残った作家、すばらしいと思う作品を創る作家は全て頭に自然に入っています。
「○屋○○」先生の事は分かりませんので、一般的な話を致します。
 きものの良さは作家先生ではなく、作品そのものです。作品その物が、それを着る人にとってどれだけ価値があるものなのかが全てです。しかし、今の呉服業界では、作家物、落款、その他あらぬ付加価値が強調されて消費者に高値で売られているのが現状です。
 その辺の事情は、「続きもの春秋1.作家物と落款」「続々きもの春秋8.先生のインフレとその功罪」を参照してください。
  辻が花さんは、今二枚の着物を前にどちらを選ぼうかと迷われています。それで、私への相談となった訳ですが、相談の内容に幾つか気になる表現があります。
 「烙印+名入りのもの」 「烙印と名入りなし」 「落款アリ、ナシ」 「烙印なしの2.のほうが約100万は高かった」 「着物本来のものとして、どちらが価値があるのか??」「上代の高いものがお得か」
  今購入しようとしている着物をどうしようとお考えですか?。
  ご自分でお召しになろうとお考えだと思います。そのきものを投機の対象とは考えてはおられないでしょう。将来高値で転売するために付加価値のある物…などとは考えてはいらっしゃらないでしょう。
  問題は、辻が花さんがそのきものに愛着が持てるかどうか、すばらしい着物だと思えるかどうか。そして、現実的な問題では、支払おうとする金額がそれに見合っているかどうか、それだけです。
「きもの本来の価値」とはいったい何でしょうか。
「作家名」「落款」「名入れ」「元上代」それらは、ほとんど意味をなさないものと考えたほうが良いきものを選ぶ早道です。
 「作家名」…誰でも作家になれる時代です。呉服業界を知り尽くした人であれば作家名を聞けば、だいたいどのような作品かは判断できますが、初めて聞かされる作家名をありがたがる必要は全くありません。
 「落款」…元々は作家が自分の作品に対して責任を持つために押されたものですが、最近はその意味が薄れています。消費者が落款をありがたがるものですから、何にでも落款を押しています。一人の作家が一年間に創る事のできる枚数は限られているはずですが、年間数千枚も同じ落款のきものが出回っているものもあります。現在の落款は作家個人が押すのではなく、工房、染工場の印ぐらいの意味しかないものもあります。その見分けは消費者には出来ないでしょうし、それをはっきりと説明してくれる呉服屋は少ないでしょう。全てありがたい落款、と説明している呉服屋がほとんどだと思います。
 「名入れ」…これも落款と同じです。
 「元上代」…上代は呉服屋が決めるものでまちまちです。時には同じ物で4〜5倍違うでしょう。
  二枚の着物を前に迷っておられるようですが、上記のことは抜きにして、どちらが自分に合うのか、どちらが自分が好きか、愛着が持てるかという見方で選ばれてはいかがでしょう。
  期待されるような回答でなくてすみません。しかし、私にはそれしか言いようがありません。
  辻が花さんの迷いの裏には呉服業界の大きな問題がはらんでいるようですのでつい長く書いてしまいました。
  納得がいかなければ、またRESをください。

 大変に誠意あるご講義を頂き、感謝しております。
  全く「ゆうき」様のお話の通りで頭が下がる思いでした(笑)
  力のある長文を頂き本当に有難うございました。 取り急ぎ御礼まで。
 以前、某マンガで画商をテーマにしたものがありましたが、その中で「投機対象では絵が悲しい。著名なものかどうか、高額で販売されているかどうかよりも、『自分が本当に気に入っていること』が一番価値のあることである」と。
「これ、○○っていう有名な作家さんが描いた着物なのよ。高かったのよ。すごいでしょ」という言い方は、呉服屋さん相手にも、お友達相手にでも、とても貧相な会話だと思います。
  それよりも、「心から気に入った」という方がずっと良い選び方だと思います。 だって、それは自分がつけた価値ですから、たとえ誰かが知り顔に「大した価値のないものよ」といっても、「ふーん、そうなの」と聞き流せますが、もし「著名作家の価値のあるものと思ってたのが、無名作家で全然投機的価値は0」なんてわかったら、もうショックでその着物が着られなくなってしまうかもしれません。
  それが本当にすばらしい作家さんの作品であれば、落款など見なくても、すばらしいものだと感じます。
  実は、今、ある作家さんの描いた着物を手にいれるとこです。 呉服屋によれば、大層著名な作家さんだそうですが、私は知りませんでした。 そして、もう名前も忘れてしまいました。 私には作家名がどうかよりも、その描かれた絵の美しさ、安物ではまず使わない微妙な生地色と八掛色のバランスの良さ、しかも着物として仕立てて、着用したときのことを意図して描かれた構図の良さに、惚れてしまったのでした。
  しかも、値段が私にとって妥当すぎました。 多分、どっかに落款ついてくるでしょうね。 でも、そんなものは自慢しようと思いません。「私が気に入った」それこそが何よりの自慢点だと思います。 そういう意味で、どちらがお好きでしたか。そしてそれは、対象として妥当な額であり、あなたのお財布に妥当な額でしたか?
  大事なのは、こちらだと思います。

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