260.暑い日の着物   
 初めまして。 着物初心者です。 こちらのページのおかげで大変助かっております。
  お教え願いたいのは暑いときの着物についてです。
  爽やかな季節の五月ですが、今は昔と違い襦袢が単衣でも袷の着物は暑すぎる日もありますね(私は東京に住んでいます)。 それでも単衣ものを着るのはやはり下旬を待たないとおかしいのでしょうか。
  紗の博多帯は7・8月以外には締めないものですか。
  浴衣に紗の帯・絽の帯揚げ・メッシュの帯締めで装う場合、足袋と半襟は必須でしょうか。
  仕立てをしていた母が沢山着物を残してくれたのですが、私は母の存命中は興味が無く最近やっと着物の良さに目覚めた者です。
  宜しくお願いいたします。

 どの季節にどの着物を着ればよいのか、というのは着物を着る人にとって永遠の命題のようです。
  「袷は五月まで、単衣は六月、七月から薄物」と云うのが着物のTPOの通り相場のようです。
  五月でも暑い日があります。そんな時にも我慢しながら袷を着なくてはならないのでしょうか。暑くてしょうがないので洋服にしてしまおう。しかし、洋服がなかった昔の人たちはどうしていたのだろう?。そんな疑問を誰しもお持ちでしょう。
 昔の人たちは一年中着物を着ていましたから、着物を着て、暑いの寒いのと不自由することはなかっただろうことは想像できます。
 日本は四季の区別がはっきりしているせいでしょうか、きものは季節感を大切にします。また日本人はしきたりにこだわります。季節によって着るべき着物を決めています。それが上記のTPOです。
 それではそのTPOを厳格に守らなければならないのか、と言えばそうではないように思えます。季節のTPOを守らねばならないのは主に式服の世界のようです。
 着物に限らず、衣服は「暑い時には涼しく」「寒い時には温かく」というのは絶対原則です。普段着物を着ている人は暑ければ涼しい着物を着ます。
 私も母も今の時期はそろそろ単衣も着ています。その時の天候により単衣であったり袷であったりです。普段着に関しては五月に単衣を着てはいけないという決まりはありません。ただし、いくら暑くても五月に絽や紗は避けたほうが良いでしょう。薄物は視覚的なものも伴いますので、透けるものはやはり七月に入ってからの方が無難かもしれません。
 さて、式服に関しては季節感を大切にすべきでしょう。昔の人は暑さ寒さはそれなりに工夫していたようです。
  十七世紀にポルトガル人が残した日本の風習に関する記述の中に「○月○日からは羽織物は袷を着る」というものがあります。暑い時には表だけでも季節に合わせるということだと思います。式服は暦に合わせつつも、見えないところで気温に合わせる工夫をしていたのだと思います。
 五月のうだるような暑さの中、単衣の普段着を着ている人を見て周りの人はどう思うでしょうか。
「あいつは常識がない」
と思うでしょうか。
「この暑さではもう単衣ですよね。」
と声を掛けてくれる人が増えることを期待します。
 紗の博多帯は夏帯です。他の夏帯と変わりません。六月の単衣の時期から締められますが、天候と相談して、というところでしょう。
「浴衣に紗の帯・・・」のご質問については、わかりません、というよりもお答えできません。
 浴衣に帯締め帯揚げ足袋、半襟は使いません。それが従来のきものの常識です。例外はあります。踊りでは、浴衣ざらいなどで太鼓帯に足袋を履いておどります。しかし、一般に浴衣には半幅帯、素足が常識です。
 最近、浴衣に帯締め帯揚げ、足袋、半襟、おまけにハイヒールも見かけます。今までのしきたりに反するものですので決まりはないでしょう。仕来り破りに仕来りはないでしょうから。
  かかる着物はどこかの商社と着物の事を知らないデザイナーが結託して仕掛けたものと私は思っています。従来の着物から見れば、かかる姿はTシャツ短パンにネクタイをしてマフラーを掛け、裸足に革靴を履いた姿を見る思いです。
 さとみさんには是非きものが好きになっていただきたいと思います。きものに決まりはありません(誤解される言い方ですが)。きものの着方は日本人が長い時を掛けて創り上げたものです。
  「きものはこう着るべきだ。」とは誰も言えません。それぞれがきものの歩んできた道を理解すればきものの文化はもっと良くなると思います。

 早速のご丁寧なお返事、有り難うございました。
  以前は着物は何かの「お式」の時以外は着ないと決めてかかっていましたが、昨年友人に着付けを習いちょっとした外出の際にもひとりで着られるようになってみると、着物を着たときの自分は背筋も伸びいつもよりきりっとするようで、久々に装うことに新鮮な喜びを感じています。
  やはり日本人が一番美しく見えるのは和服姿だと、改めて思います。 そのことは私の子ども達にもきちんと伝えてゆきたいと思っています。

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