285.綸子の洗い張り   
 1975年頃祖母が綸子小紋の着物を誂えてくれました。柄はパステル調のオレンジ、グリーンの小花模様で、数回着た後派手になったので1985年頃染め替えました。染め替えた柄は小花の総柄を藍染にしたもので、染め替えの後も小紋特有の光沢、ぬめが失われず、その後20年間、ちょいちょい着ました。
 このたび、八掛が派手になったので、某有名デパートに持ち込んで洗張りをお願いし八掛も新しくしてもらいました。ところが、戻ってきた着物を見ると、藍が流れて褪めたような色になっており、綸子の光沢も無く、ざらざらした手触りでした。
  着物通の祖母が選んでくれた綸子なので品はいいし、丁寧に着ていたのでしみや、布の傷みもなく汚れも激しくないはずなのに、たった一回の洗い張りでこのようになってしまうこともあるものなのでしょうか。

 返信遅くなりました。今月は当社決算月でバタバタしております。
 さて、洗い張りをしてきものの顔が変わってしまったという事ですが、私の店でも洗い張りはよく頼まれますが、そういう事は今までに経験した事がありません。
 どのように変わってしまったのかは文面からはよく分りませんが、一目で分かるようなものだと思います。
 染め替えた時に色の定着が悪かった等の原因は考えられますが、もしそうであればそのデパートで何らかのコメントがあってしかるべきだと思います。店員さんは受け取った人と渡した人が違っていたのかもしれませんが、洗い張りをした職人は分かっているはずですし、それはデパートに伝わっているはずです。
「一回の洗い張りでこのようになってしまうこと」はありません。としか言いようがありません。
  そのデパートに良く説明してもらってはいかがでしょうか。
 この件に関しては旅から旅さんのほうが専門です。  旅さん〜〜〜〜〜〜コメントをお願いいたします〜〜〜〜〜〜〜。

 さて、ゆうきくんから呼ばれたので、僕からも、質問もさせていただきますが、お答えもさせていただきます。

▼みどりさん: >1975年頃祖母が綸子小紋の着物を誂えてくれました。

 おばあさまが誂えてくださった大切な着物ですね。 白生地から柄染めされたわけですね?

>柄はパステル調のオレンジ、グリーンの小花模様で、数回着た後派手になったので1985年頃染め替えました。染め替えた柄は小花の総柄を藍染にしたもので、染め替えの後も小紋特有の光沢、ぬめが失われず、その後20年間、ちょいちょい着ました。

 ここらへんが、ようわからんのですが、「小花の総柄を藍染」というところですが、藍染めは、ほんとの藍染め、つまり、正藍染めなのか、それとも、インド藍なのか、それとも、化学染料を使ってるんだけれど、それを藍染めと称したのか?ということなのです。 また、地色は、引染めだったのか、それとも、シゴキ染めだったのか、、、。
 それと、ここがまた、よくわからんのですが、「小紋特有の光沢、ぬめが」というところなのですが、光沢は白生地がもたらします。 綸子縮緬なのか、もしくはあのころでしたら、駒緞子なのか、もしかしたら、紋意匠なのか、、、、。

>このたび、八掛が派手になったので、某有名デパートに持ち込んで洗張りをお願いし八掛も新しくしてもらいました。ところが、戻ってきた着物を見ると、藍が流れて褪めたような色になっており、綸子の光沢も無く、ざらざらした手触りでした。

 藍が流れた、、、というのは、色が薄くなったという意味ですね? これは、洗張りをすると、多かれ少なかれ、起こることです。 なにしろ、染料は水に溶けますので、若干の色は出ますし、色は溶け出して、これまた、若干ですが、色は薄くなります。 それは困るという場合は、水による洗張りではなく、揮発油による洗張りをします。 地色の濃い着物は、どうしても、染料が生地の上に乗ってるだけという場合が多いので、揮発油での洗張りをします。
  たとえば、喪服や黒留袖などの場合は。 もちろん、水での洗張りのあと、地色をふたたび、染め直すのであれば、水による洗張りをすることもありますが。
  今回のケースでは、さー、どうですやろな。 僕が現品を見たわけやないので、なんとも言えませんけど、僕やったら、どっちにしますやろな。 見てないだけに、なんとも、言えまへんわなー。 どっちにしろ、悉皆という仕事は、ほんま、経験がモノを言います。
  いっぺん、そのデパートはんに、説明を求めはったら、どないですやろ? では、またね。(旅)

 ゆうき様、旅様お忙しいところ丁寧にお答えくださり有難うございます。
  ご質問の「白生地から柄染め」したかどうか分かりません。 又、藍染の詳細についても分かりません。 「小紋特有の光沢。。。」は書き間違いで、小紋ではなく綸子です。
  揮発油による洗い張りという方法があるのは知りませんでした。 扱ったデパートに聞いてみようとは思っていましたがその前に時々拝見している結城屋さんのサイトで質問いたしました。
  いろいろ教えていただき有難うございます。
 結城屋様、旅様 洗い張りをお願いしたデパートに着物を持って聞きに行きました。
  あちらもこんなのは初めてだとおっしゃりもしかしたら裏表反対に縫ってしまったのではとのことで袖の部分を少しほぐし見てみたところやはり裏表反対であることが分かりました。早速経緯を調べ縫い直しに出してくれることになり一段落しましたが、後で考えるに、着物に少しでもなじみのある人ならこの生地の裏表を間違えるなどということがありえるだろうか、間違えたまま一日、二日縫い続けたのだろうか、など更に疑問が沸いてきました。
  もしかして下請けの洗い張り屋が中国でやらせているなどの可能性もあるのでしょうか。帯など安いものを中国で作らせているとは聞いていますが染め替えや洗い張りなども国外の安い労働力を使ってやっているところがあるのでしょうか。
 洗い張りをして、裏返しだったという話を聞いて、なるほどと思いました。
  洗い張りを敷いただけで色が落ちてしまうというのはどうにも解せませんでした。
 さて、ご質問の中国(外国)仕立てについてお応えします。
 中国(外国)仕立ては今では相当に利用されているようです。ある筋では当たり前の状態のようです。特に大量に販売するところではそれに頼っているようです。
 当社では、中国(外国)仕立ては使っておりませんので、人から聞いた話の域を出ませんが、問屋さんなどに聞いた話では次のようです。
 中国やベトナムあたりで工場を造って専門に仕立てをしている業者があるようです。きものの仕立てに関して日本人と同じように知識を教え込むことはできません。それは、やはり、他国の文化を短時間には理解できないからでしょう。きものとはどんなものなのか、どんな機能を持っているのか、どんな着方をするのかが理解できないからです。
  仕立て工場ではいくつもの専門工程に分けて仕立てをさせているという話です。つまり、袖を作る人、袖を付ける人、背縫いをする人、脇縫いをする人、というように多くの工程に分け、専門的に技術を修得させているそうです。
 専門的に教えられた彼らの技術は、と言えば、それは分りません。日本でもそうであるように、いい加減に見よう見まねでしているところから、きちんと技術指導をしている工場までいろいろあるでしょうから、一概に肯定または否定することはできません。
 しかし、いくら上手な工場でも、大前提であるきものの文化、きものそのものを理解して仕立てているとは思えません。
 裏表を間違える、といった間違いが、中国(外国)仕立てで起きる可能性は相当に大きいと思います。  以前、択捉島で地震が起きた時に日本人の墓が倒れてしまい、現地ロシア人が復旧しようとしてもどちらが上か下か、前か後ろか分らなかったという話を聞いた事があります。日本のきもの、日本の染めを見た事がない人が裏表を間違えるといったことは十分に考えられます。
  ロウケツ染めなどは、裏の方が柄がはっきりとしますので、日本人の仕立て屋さんもどちらが表なのかを確認しにきます。私の店でも過去そういう事がありました。中国(外国)仕立てではなおさらだと思います。
 私の店では個人の仕立士だけですが、人手が足りなくて困っています。仕立て屋さん(複数の仕立て士を抱えているところ)もありますが、帯以外は使っていません。
 仕立ては仕立士の顔が見えなければ頼めません。仕立士によって得意不得意がありますし、客からの要望やクレームがあった場合、仕立士の顔が見えなければ、対応に困るからです。
 今回のケースでは、もしも海外の工場で仕立てたものであれば、解いて再び仕立てに出すだけで、裏返しに仕立ててしまったことの教訓は何も残らないでしょう。
 中国(外国)仕立ての是非については詳しく論じませんが、きものの仕立てはきものを(日本の文化を)よく知る人でなければ、ひずみが出て来るように思えます。しかし、私の店でもそうであるように、その担い手が減っているのも事実です。
 海外に仕立てを頼らざるを得ない時が来るのかもしれませんが、中国(外国)仕立てが安く利益を揚げられるから日本人の仕立てを敬遠するということは避けなければなりません。
 中国(外国)仕立てをする場合は、消費者にきちんと説明する義務があると思います。国内の人件費が高いのは事実ですので、「質の良い国内の仕立」がよいのか「安価な海外仕立」の方がよいのかを消費者に選択させるということが。
 安価な海外仕立を国内と偽って差益を取ろうとするのは避けなければなりません。
 みどりさん、こんにちは。 色が褪せたようになった、、、とか、光沢がなくなりザラザラした風合いになった、、、理由がよくわかりました。 裏表、反対にしたら、確かにそうなります。 普通の友禅は表のほうが地色も柄色も濃いですし、生地もつるつるの裏はザラザラですし、ザラザラの裏はつるつるです。 ただ、それが国内の仕立てか、国外の仕立てであるかは、裏表を間違っただけでは、判断できません。
  それはみどりさんだけではなく、他のかたもそうやと思いますが、すこし、仕立て職人に対する誤解があると思います。 どういう誤解かというと、仕立てをする職人が必ずしも、着物のすべてに精通してるわけではないのです。 着物を仕立てるということにかけては、プロ中のプロですが、じゃあ、反物の裏表を自信を持って、判定できるか?となると、さーどうでっしゃろなぁ〜ぐらいの自信しかないと思いますよ。
  自信がなければ、その仕事を回してきた相手に聞きますが、中途半端な自信を持った職人やったら、最後まで仕立ててしまうんちゃうかなぁ、、、これ、長い間の経験で言うてますねんけど、全国の仕立て職人はん、怒らんといてね。(笑)
  それでね、問題はやね、そういう着物が仕立てあがってきて、それを見て、なんにも思わん、、、おかしいなぁ、、、と思わんのが、おかしいと思いますねん。 ちゃんと、検品してるんやろか?と思いますねん。 仕立てあがってきた着物を検品するということは、きれいに畳まれている着物をぶわーと広げて、いろんなとこ検品したあと、また、きれいに畳まなあかん。 これがでけへんかったら、まー、検品は、しやはらへんやろねー。 では、またね。(旅)
 結城屋様の国外仕立てに関する説明、又旅様の検品についてのコメント大変参考になりました。 検品についてはそのデパートでは預かった着物を写真に撮りPCに保存しているとのことでその写真も見せてもらいました。ただその写真は返ってきた着物の「本人確認」に使っているようで、それ以上の検品があるのかどうか。写真自体も詳細が映像からは分からないのでかろうじて「本人確認」のみ出来たというところでしょうか。
  裏表の判断については着物地、帯締めなど時々どちらが表か分からないものはありますよね、でも今回の綸子は、「表裏ほとんど同じ」でもなければ、「好みによっては裏のほうが好きという人もいるかもね」というようなものでもないのです。
  国外仕立てについては、以前(2年前)やはり老舗の別のデパートにそこで誂えた着物の洗い張りを頼んだ時「うちはもちろん国内で仕立てます」と言われたこともあり、今回、そこ以上の老舗デパートに頼んだので国内ですかと聞くのも失礼かと思い発注時点では問いただしませんでしたし、今度聞きに行ったときも事情を調べてといわれたのでその場では質問しませんでした。
  私は、着物は一生もので自分用の着物も派手になれば染め変えて着続けたいし、母、祖母の着物も染め替えたり寸法直しをして着ているので、長期的に見ればその維持コストは安いと思っています。形が変わらないのでTPOも洋服よりラクだし合理的な衣服だと思います。着物のインフラ維持のため少々高くても国内の仕立て、品物にお金を払いたいと考えているのでもし知らぬところで国外へのアウトソーシングに一役買ってしまったならとても残念です。

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