286.楊柳の襦袢   
 いつも楽しく拝見しています。
 さて、楊柳の単衣の礼装用襦袢があるのですが、10月にある友人の結婚式に着ていってもよいものでしょうか。
 また、末広の扇子は親族だけが持つのでよいんですよね?
 よろしくご教示くださいませ。

 またまたゆうきくんには回答しづらい御質問です。
「10月に単衣の襦袢を着て良いのか?」
 この御質問に私は答えられる立場にありません。
 もしも私が、「着ても良い。」 と、答えたとしたらどうなるのでしょうか。 日本中の人達、口うるさいオバサン達も、
「ゆうきくんが良いと言ったので着てもよいのだ。」
と、思うでしょうか。そんなことはありません。私はそういう立場にありませんし、私は皆さんと同じ、唯のきものの好きな人の一人です。強いて言えば、きものを商っているだけ、ちょっぴり知識が豊富なだけです。
 10月に単衣の襦袢を着るのは、万人が認めているしきたりではないのは、もちろんご承知でしょう。しかし、それでは絶対に着てはいけないのかと言えば、そうでもないような気もします。ある席では、単衣の襦袢を見咎められて、非難轟々ということもあるかもしれませんし、またある席では、
「今時10月でも単衣じゃなければ暑いですものね。」
と言われるかも知れません。
 ちもりんさんが単衣の襦袢を着るか否かのご判断はご自分でなさってください。私にできることは、その考える材料を提供することぐらいです。
 さて、その材料ですが、何故10月は袷を着るのでしょうか。「6月は単衣、夏はうすもの」と言った日本の着物のしきたりは、四季のはっきりとした日本の気候と無関係ではないでしょう。季節に敏感な日本の文化、風土がそうさせているのだと思います。
 袷を脱ぎすて、単衣を着れば長い冬から解放される気持ちになるでしょうし、6月の暑い日に夏帯を締めれば見る人に
「ああ、もう夏も近いんだ。」
と思わせることでしょう。見た目に暖かさ、涼しさを感じさせるというのは日本のきものの特徴かもしれません。
 しかし、現代は昔ほど四季の変化がないように思えます。地球温暖化のせいなのでしょうか、昔(私が子供のころ)は冬はもっと雪が積もったように思えますし、夏のギラギラとした太陽は今よりも強かったようにも思えます。ただ現代は冷暖房が完備しているからかもしれません。
 昔の十二単は寒さを凌ぐためだったと聞きます。火鉢程度の暖房で、隙間風が吹きさらす御殿では、そうでもしなければ耐えられなかったでしょう。
 襦袢に関して言えば、昔(3〜40年以前)は袷の時期には袷の襦袢を着ていました。ここで言う袷の襦袢と言うのは総裏の襦袢です。やはり当時は寒さを凌ぐために袷のきものに総裏の袷襦袢を着ていました。しかし、現在総裏の袷襦袢をつくるひとは百人に一人と言ってよいでしょう。私も今までに数着しか仕立てた事がありません。
  99人がつくるのは、無双の襦袢です。無双の襦袢というのは袖無双と言って、胴の部分は単衣ですが袖口、身八、裾は袷になっています。と言うよりも、見たところ(見えるところ)が袷になっています。袷を涼しく着る工夫、季節感を壊さない工夫と言えるでしょう。
 同じ事は長着でもあります。それ程普及していませんが、胴抜きと言う仕立ても行われます。袷のきものに八掛だけを付けて胴裏を使わない仕立てです。人目には袷に見えます。
 これも季節感を壊さない工夫と言えるでしょう。
 ちもりんさんが、その単衣襦袢をお召しになりたい動機は何なのでしょうか。「表地に良く合うから」「袷襦袢を持っていないから」「その襦袢が一番着易いから」「暑くて袷は着れないから」等々色々な理由が考えられますが、その辺の事情も考え合わせたうえで判断なさってはいかがでしょうか。
 またまた答えにならなくてすみません。
 扇子については、はっきりとした決まりは分りません。あるのかもわかりません。

 旅から旅です。 ちもりんさん、こんにちは。 僕に聞かれてないのは、ようわかってるんですが、これはちょっと言うとかんと、誤解を受けはるひとも出てくるんではないかと思い、敢えて、書かせていただきます。
  その件の楊柳地の長襦袢は、透けた布ではないんでしょう? もし、そうでしたら、単衣の長襦袢は、ぜひ、10月に着てください。 もし、麻の縮のような素材でしたら、10月はガマンしてやってください。 礼装でしたら、なおさらのことですが。 僕の住んでいる京都では、透ける布の単衣襦袢は6月から9月末まで。 透けない布の単衣襦袢は、5月と10月ということになっています。 そのほかの季節は袖無双胴抜きの襦袢か、寒いときは裏つきの袷襦袢ということになっています。 では、またね。(旅)
  ゆうきくん、旅から旅へさん、ありがとうございました。
 実はこの襦袢は、「礼装用だから袷に」と私が言ったのを、 「楊柳地だから単衣で十分一年中着られます」と呉服屋さんが押し切って単衣に仕立ててしまったのです。
 お二人のお返事から、それは間違いらしいということがわかりました。
 いずれにせよ、真っ白な襦袢はこれ1枚しか持っていないので、これを着ようと思います。
 旅から旅へさん、京都では着るとのこと、勇気づけられました。ありがとうございました。
 袷襦袢の裏なし版と違いますか? うまいこと、言えへんのやけど、長襦袢の袖をひっくりかえして、ごらんあれ。 袖が二重になってませんか? そういうのを、袖無双(そでむそう)と言います。 そして、衿から裾までは胴裏がついてないでしょ? そういうのを胴抜き(どうぬき)と言います。 そやけど、一年中は、着られまへんけどな。 11月から4月末までですけどね。 まー、いっぺん、袖、見てみなはれ。 では、またね。(旅)

|戻る|