293.金彩友禅について   
 はじめまして。 今年の春から、着付けの練習を始めた者です。 教室にも通わず、着物の購入も専らネット・ショッピングですので、 ゆうきくんには、随分お勉強させて頂いています。 ありがとうございます。
 おっちょこちょいなものですから、 粗相をして着物を台無しにしても、泣かずにすむように、 ネットオークションで仕立て代込みの金彩友禅・訪問着を 3万円で落札しました。
  単衣にするために居敷き当てを付け、 一越縮緬なので、縮み防止の意味もありパールトーン加工をお願いしました。 仕上がり届いてみると、丹後縮緬だったことは嬉しい驚きでしたが、 居敷き当てがついておらず、 たくさん散りばめられた金彩の扇のなかには、 ぴっちりと箔が付かず、ひび割れたようになった箇所が 複数見られました。
  着物初心者の私は、「意匠?」と思ったのですが、 居敷き当てのこともありましたので、事前に連絡の上、 訪問着を返送しました。 すると、居敷き当てについては平謝りだったのですが、 金彩については、
「この様な商品は、どうしても商品管理やお仕立てされる段階  湯のし等で多少は、この様になる可能性がございますのでご理解頂きたい範囲でございます。お直ししても箔の色などの微妙な色彩に違いが出てしまい、かえって目立ちます。○○様にとってお気になされる範囲との事ですので当店と致しましては、返品も承りたいと存じますがいかがでしょうか。」
というお返事でした。 着ているうちに、他にもトラブルが出てきそうで、返品しましたが、 本当に許容範囲だったのでしょうか?
 そもそも、「この様な商品」の意味が私には分かりません。
 そのショップは、数十万円の希望落札価格を付けてましたので、 「安いから仕方ない」は通らないと思うのですが・・・。
  問題の金彩の難がどのようなものなのか分りませんのではっきりした事は申し上げられません。
 しかし、その前に、仕立て代込みの訪問着が3万円とのことです。その価格を考えてみてください。とてもまともな商品とは思えません。何がまともでないか、についてはいろいろありますが、次の事を考えてみて下さい。
 仕立て代はいくらぐらいかかるものでしょう。日本の熟練技術者(必ずしも名人ではなくても)は訪問着を仕立てるのに早くて2〜3日は要するでしょう。特殊技術を持った人の賃金はいくらぐらいでしょうか。
 正絹であれば丹後縮緬の一越縮緬正反の白生地はいくらするでしょうか。その手間はどれだけのものでしょうか。
 金彩友禅の染価はいくらするでしょうか。熟練職人の手にかかったものではないでしょうが、型糸目、箔の圧着加工あるいはプリントであっても、その手間賃はいくらぐらいするでしょうか。
 日本の職人(必ずしも熟練、手仕事ではなくても)がまともに訪問着を染め上げて、まともに流通させて仕立てて3万円というのはまず考えられないことです。(と言うよりもそれでは続けられないでしょう。)
 我々専門店で扱う訪問着では表記のような小売店の言い訳は通るものではありません。
 大変失礼な言い方かもしれませんが、500万円と称する車をオークションで30万円で購入され、具合がおかしいと正規ディーラーに持ち込まれたようなものです。
 前にも書きましたが、きものの世界で「参考上代価格」「希望落札価格」は全く意味のないものと思ってください。オークションであろうと赤札であろうと、購入された価格と商品が釣り合っているかどうか。満足できるかどうか、それだけです。

 ご多忙の中、真摯なお返事をありがとうございました。

> 我々専門店で扱う訪問着では表記のような小売店の言い訳は通るものではありません  

 おかげ様で、スッキリ致しました。
 お店(現金問屋ということですが)に対し、着物に無知な私が理不尽な仕打ちをしたのか、気になっていましたので。
 仕立て代込みで3万円の訪問着に、あまり期待してはいけないとは分かっていたのですが、せっかく両親が作ってくれた袷の付け下げ(?)を、汚したくない気持ちから、かなり長い間着ていない有様なものですから。
 今回のことで、両親の作ってくれた着物と袋帯の美しさ、値打ちを再確認できました。
 着物は、加賀風の京友禅(「粋峰」の銘があります)なのですが、裏にまで糸目が通り、花も生き生きと描かれているように思います。
 着物より高かった金色の帯には、鶴が何羽も織られていますが、視線の先が何処なのか分かるような感じで、考えていることが伝わってくるような気さえ致します。母も、似たような鶴が織られた袋帯を持っていますが、値打ちの差は一目瞭然ですね。
 帯の織元を知りたいと思いますが、帯の証紙を捨ててしまったようです。
 証紙の意味を知っておれば、大切に保管したのでしょうが・・・。
 3万円とはいえ、私には大切なお金です。今回、着物の値打ちを知ろうとして、私なりに時間とエネルギーをつぎ込み、今まで無かった知識を得る事が出来ました。   
 ゆうきくんには、それでも満たされなかった部分を完補して頂きました。感謝しております。
 なかなか私自身は、手の込んだ値打ちのある着物を作ることは難しいとは思いますが、着物人口の底辺になれるためにも、着物を着続けようと思っています。

 
 ご両親につくっていただいた着物を汚したくない気持ちは良く分かります。 しかし、是非臆せずにお召しになってください。
  着物は着て初めて着物の良さを引き出せます。 長いこと呉服屋をしておりますが、呉服屋にとって
「この前仕立てた着物、まだ着ていないのよ。」
「前につくった着物はまだ仕付が付いたままなの。」
と言われるのが何よりもつらく感じます。
  ご両親も、その着物を着る姿を見たくておられると思います。 汚れは・・・気にせず着てください。どんなに汚そうとも元通りにしてくれる魔術師が和装業界には沢山います。魔術師にお任せください。 ただし、シミを付けても自分で落とそうとは思わないように。
  もう一つ・・・「安い着物だから汚れても構わない」と着る着物姿よりも 「親がつくってくれた着物だから汚さないように」と着る着物姿の方が日本の女性に似つかわしいと思います。
 

 あたたかいお返事をありがとうございます。

>長いこと呉服屋をしておりますが、呉服屋にとって
>「この前仕立てた着物、まだ着ていないのよ。」
>「前につくった着物はまだ仕付が付いたままなの。」
>と言われるのが何よりもつらく感じます

 やはり、ゆうきくんはステキな呉服屋さんですね!

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