311.作家落款について                      08/12/15  
 はじめまして。 お着物のことで調べごとをしておりましたら、こちらのサイトにたどり着き、 たくさんのことをお勉強させていただいております。 ありがとうございます。
 早速ではございますが、ひとつお教えいただきたいことがございます。
 先日、呉服店にて、北村武資さんの帯を購入いたしました。 たれの折込には、落款が織り込まれています。 ですが、作品名の書かれた色紙や、桐箱などは何もなく、 呉服店に問いあわせたところ、 最初からないのか、あったが処分されたのか不明ですが、 そちらのお店に帯が入った時から、帯以外は何もないとのことでした。
 友人も、同じ先生の帯を持っていますが、 手書きの色紙があり、手書きの桐箱に入っています。 私にとりましては、よいお値段でしたので、 本当に、先生の作品か心配になりました。 呉服店では、帯以外の付属品は処分されることが多いのでしょうか?
  また、帯に偽物はあるものでしょうか?
 おそらくですが、少し前の作品のようです。 以前は色紙や桐箱を書かれていなかったのでしょうか? ネットで落款を見比べてみたりしましたがよくわかりません。 何か、確認の方法はありますか?
 つまらないことで申し訳ないのですが、 気になってしまって、どうかよろしくお願いいたします。
 ご質問の内容は、その帯が本当に北村武資さんの帯なのか。本物であれば何故色紙や桐箱がないのか、と言うことだともいます。
  帯の偽物についてですが、偽物の定義をはっきりしなければなりません。
 中国で造られている有名ブランドの偽物は、本物とそっくりに造り、そのブランドの商品として売られています。これは完全に黒と言えます。同じ様に北村武資さんの帯でない物を「北村武資作」として売ればそれは偽物と言えますし、犯罪の範疇に入るでしょう。この場合そうであったかどうかは分かりません。
  織物や染物において似たものを創るというのは良くある話です。ヒット商品があれば他社がそれに似た商品を造るのは呉服業界だけではないでしょう。
 昔西陣で聞いた話ですが、自分のところで織った帯の柄とそっくりな商品を他の織屋で織っていたという話を聞いたことがあります。その織屋は意匠登録もしていたのでコピーは犯罪になるのですが、柄の一部を微妙に変えて織るのだそうです。その時は扇の柄だったのですが、コピー品は扇の柄が一本少なかったのだそうです。そのような類似の柄または織の商品が出回るのはこの業界でもある事ですが、作者を偽って販売する例は通常の呉服店ではまずないと思います。(全く無いとはいいきりませんが)
 まともな呉服店で「北村武資作」としていたのであれば北村武資の作品だと思います。
 さて、色紙、桐箱についてですが、作家物であれば必ず色紙、桐箱が付いているわけではありません。初めから色紙を付けてくる作品もありますが、それは作家の意図で付けているのではなく、問屋が営業戦略上付けているのがほとんどだと思います。
 つまり商品の付加価値として色紙や桐箱を付けています。消費者にとっては自分の購入した商品の高付加価値の証として欲しますのでそうなるのでしょう。本当の作家物であれば色紙は請求すれば後で送ってくれます。購入した呉服店に頼めば問屋を通して色紙は書いてくれると思います。ただし正規のルートで流通したもので、バッタ商品などは書いてくれないでしょう。
 北村さんの場合、相当数の商品が出回っていますのでどのように対応してもらえるかは分かりませんが、購入された呉服店に相談されたら良いでしょう。
 桐箱は色紙以上に付加価値を演出するもので、使う使わないかは呉服店レベルの話です。桐箱自体今はそれほど高価なものではないのでこれも呉服店に相談したらいかがでしょうか。
 「北村さんの帯ですから桐箱付けてください」と言えば付けてくれるかもしれません。
 以上が回答ですが、色紙、桐箱どちらも付けてもらった方が良いことは間違いありませんが、色紙や桐箱があろうとなかろうと商品の価値は変わらないと言う事は心にとどめておいていただきたいと思います。
 呉服の商売をいろいろと見てまいりましたが、作品そのものよりも色紙や桐箱その他作品には関係のない付加価値に振り回されている消費者を多く見かけてきましたので。

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