336.西陣御召   
 はじめまして。楽しく読ませていただいています。
  私は着物に興味を持って1年という初心者です。「ちりとてちん」がきっかけなの か、 自分でもよくわからないのですが、突然着物が着たくなったのです。
 いろいろなところでお買い物をしていますが、先日実店舗の着物やさんで、作家さんが来店してのイベントで西陣お召しについての説明を聞いたときに、糸のよりとかに基準が細かくきまっていて「西陣御召」という名前で売っていいの は ほんの少し・・・という話を聞きました。
  インターネットでや安く売られているお召しの中には「西陣織御召」とか「西陣の 御 召」といったものもあるのですが、「西陣御召」という名前でうられているものもあります。
  気に入った夏用のお召しを購入しましたが、ネットでのものとは一ケタ違います。 気になっていろいろ調べましたがよくわかりません。
 教えていただければうれしいです。よろしくお願いします。
 きものを着ない人が(着たことのない人が)突然きものを着出す、というのはよく ある話です。私も何人か知っていますし、友達も何人かきもの好きにしました。おお いにきものを着てください。
 ご質問の内容は、現在の呉服業界の問題や矛盾を映しているように思えます。
 ご自分が求められた「西陣御召」は果たして説明された通りのものなのか、ネッ トの商品とはどう違うのか、といったお気持ちからのご質問と推察いたします。
 まず、「西陣御召」とは何なのかを考えてみます。「西陣御召」は西陣で織られ た御召であるだろうことは誰でも分かると思います。では「西陣御召」とは西陣の御 召の中で特殊なものなのかどうかということです。
 これは客観的に結論を出すのは難 しいと思います。
 もしも「西陣御召」が商標登録されたものであれば、その織屋が 織った特定の御召であると言えますが、それは私は分かりません。その呉服屋さんに商 標登録されたものかどうか聞いてみたらわかるでしょう。私はそのような話は聞いたことはありませんし、「西陣御召」というのがそれほど厳密に使われているとは思えません。
 現在の呉服業界ではあの手この手の販売方法が横行していますので、お話だけからどのような商品がどのように説明されて売られたのかは分かりません。
 善意に捉えれば、その作家さん(と称する人)は、
「自分たちはより良い商品を作るために材料を厳選し加工を厳密に行っている。西陣御召という名は我々が織っている御召に値する。他の御召はその域ではない。」
と言うことでしょう。
 悪意に捉えれば、付加価値を高めるための単なる売り口上かもしれません。(こ の場合に限りませんが、そのような商売はこの業界ではあることです。)
 現物も値段も分からずにどちらなのかは私には分かりません。どちらの可能性もあるでしょう。
 論理的に解決しようとすれば、「・・・基準が決まっていて、西陣御召という名 前で売っていいのは・・・」と言っていますが、「売っていい」と言っているのは誰なのか、誰が決めた「基準」なのかをその呉服屋さんに聞いてみてください。
 それは 商標登録を許した経済産業省なのか、西陣織工業組合なのか、またはその他の検査機 関なのか、それとも単にその織屋さんが決めたことなのか、それによって真実が分かると思います。
 ネットの価格というのは基準にならないと思ってください。高くても安くてもどちらでもです。
 きものは工業製品の様に規格で商品を特定できません。同じ「西陣御召」と言っても、その先生がおっしゃるように糸も織り方も様々です。全く同一品でなければ比較の対象になりません。
 また、同一商品もありますが、バッタ商品が出回っていますのでネットの商品が安くてもそれが基準とは断定できませんし、どのような状態の商品かも分かりません。
 価格だけでネットの商品を追いかけるのも危険ですし、呉服屋の売り口上を鵜呑みにするのも危険です。私も呉服屋ですが、そのようにしかお答えできないのは業界として恥ずかしいと思いますが、現状はそのようです。
 ゆうきくん様、こんにちは。
  早速のご丁寧なお返事をありがとうございました。お忙しいのに こんなに早くお返事がいただけると思ってませんでしたので感激しています。
  着物は魔物とは聞きますが、着たいと思って集めはじめると欲しい気持ちに ブレーキがかからず、困っています。
  お店で実際にあてて帯や小物を合わせると、いいと思ったものが意外に似合わなかっ たり、 あまり気のすすまなかった物が、組み合わせによってすごくステキだったり、 ネットで写真でお買い物をするのは難しいと感じていることもあって顔なじみになった同じお店で購入することが多いのですが、 何せ高額なものなので・・・(着尺をあてていると金銭感覚がマヒしてきます!)
  「もうこれ以上はできない」という値引きをされると、買わないと悪いような気もしてきます。 それで家に帰ってから、悩むんです。本当にそれだけの金額を出す価値があるものか どうか気になって調べたりしてしまいます。
  前に菅有鬼一さんの東京友禅の小紋と名古屋帯をあつらえて ネットで検索したら、同じ作家さんの小紋があるネットショップのセールで¥22000で売られていて ものすごいショックを受けたことがあります。買った小紋の値段は20万ぐらい(特 別価格で)だったので。
 このときは気に入った柄があったので、思わず1枚買ってしまいました(お店には内 緒にしてますが)。 届いた物はちゃんとしたものでした。 お店で「こんなのがあったよ〜(; ;)」とすぐ報告したら「それでは白生地代に もならない、倒産流れか 何かじゃないか」と驚いていました。
  いつも言われるのは「ここは問屋をたくさん通してないから他で買うより良心的な値段になっている」 です。実際、ネットで作家さんのホームページで市場価格35万円となっているもの が20万円という値段 だったものもありました。
  お店の人たちがいい人たちなので、信用はしているのですが、どこか疑問を感じなが ら通っている 部分はあります。
  今回質問させていただいた件はお店に聞いてみて、またご報告します。
 「よくある質問」にのせていただくのは構いません。 着物で迷子になっているかたは多いと思いますので。 私も大島のことを調べていてゆうきくんのところにたどり着き、 いろいろ勉強させていただきました。とても参考になりました。 ありがとうございました。
 今回は夏物のお召し(破陣楽というシリーズ)で、中に色襦ばんを着れば単の時期に も着れるので 6月から9月まで着られるというのが売り文句(私がまだ単も夏物も持っていないので) でした。ちなみにこれは正しいでしょうか?
 お値段はお店での値札が298000円(税別)でこれも問屋さん(京都のつかき??問屋 さんもいらしてました)の 特別価格で、ふだん40万以上しているもの、ということでした。
 私の買った値段は20万(税込)で、仕立ては春にしていただこうと 思って反物の みの 購入です。
  またお時間あるときにお返事いただければうれしいです。 本当にありがとうございました。
 
 店が忙しければよいのですが、お盆は暇です。ことしはそれに輪を掛けてオリンピックと高校野球の為に街に人が出てきません。ご質問を頂戴したのは良いタイミングでした。
 画像で見せていただいた夏物の御召ですが、相当に凝った織のように見えます。塚喜商事の「破陣楽」とのことですが、見たことがありません。調べてみましたが分かりませんでした。
 しかし、普段40万円、値札298000円というのは御召としては破格の値段だと思います。御召でその値段にはあまりお目にかかったことがありません。ただ見てもいないので何とも言えません。
 きものの価格に関しては前にも書きましたが、次のようなことは言えます。
 きものに限らず二重価格はよく見かけるのですが、きものに関しては二重価格は全く当てにならないということです。 今回の場合、 @普段40万円 Aお店での値札298000円 B実際の売値が20万円 となっていますが、@とAは無視して構いません。20万円で購入されたという事実のみを考えるべきです。
 20万円という価格がその商品で満足できたかどうか、それだけです。 きものにはメーカーで上代設定(参考上代価格)することはほとんどありません。(極一部ありますが)上代の決定権は小売店にあります。上代をいくらにするかは小売店次第です。
  「この商品は標準価格が○○です。」
といくらでも小売店は言うことができます。
  私も参考に他のネットショップを見ていますが、その多くが二重価格、三重価格で表示されています。 「参考価格」「標準価格」「特別価格」などと表示されていますが、「参考価格」というのはべらぼうな価格がほとんどです。
「特別価格」は当たり前の価格あるいは、やや安い価格で表示されていても「参考価格」や「標準価格」は小売店がいくらでも設定できる値段です。
  本来二重価格というのは、黒札は通常販売している実績がなければなりません。スーパーの食品で一時問題になりましたが、販売実績のない二重価格は不当であるといえます。
  私の店でもバーゲンの時は二重価格で販売しますが、それは在庫として店頭で黒札をつけているものです。 格別その呉服屋さんを非難するわけではなく、不本意ながら呉服業界では通常行われていますので、上述したように二重価格はあてにせず、実売価格で考えたほうが良いと申し上げたいのです。
  呉服屋の売り口上は様々です。
「ここは問屋をたくさん通していないから・・・」もその一つです。他よりも安く仕入れても掛け率が高ければ上代も高くなってしまいます。
 その他「作家物」「希少品」などの売り口上を信じる信じないは消費者に委ねられますが、最終的には購入した価格が納得できるものかどうかのただ一点だと言えます。 (「よくある質問168、教えてください」を参照してください)
  「ネットで作家さんのホームページで市場価格35万円・・・」についてですが、作家(染元)、染屋、織屋、問屋で価格を提示する場合は、一般的な価格の内最も高い金額を提示するのが普通です。
 作家、染屋、織屋、問屋は小売りをするわけではなく、小売りをするのは小売屋です。もしも、作家が小売店よりも安く金額を提示した場合、小売屋から文句がきます。場合によっては取引を停止する場合もあります。
  商品を産地で購入する場合も同じです。消費者は産地であれば安く買えると思い込んでいる人が多いのですが、反対のケースが多いのです。産地で安く売ってしまえば問屋、小売り屋の信用は丸つぶれになりますので、流通経路の最も下である小売店の価格に合わせざるを得ないのです。しかも大手の小売屋ほど高く売っているという事情がありますので、産地は高価な上代についていかざるを得ないのです。
 最近は問屋が当てにならないので、メーカーが直接小売屋や消費者に売るケースも出てきていますが、販売量が見込めないのでそれほど強気(安く)に上代を設定してはいないようです。そういう意味では作家さんのホームページの価格を参考にするのはいかがかとも思います。
  「中に色襦袢を着れば・・・」について 色襦袢を着れば、透け感がなくなり単衣の時期にも着れる、と言うことでしょうか。 そう言うTPOは私は聞いたことはありません。しかし、そのような考えで来ている人もいるのでしょう。
 TPOについて、正しい正しくないと言える人は私も含めて誰もいないのです。(きもの講座7きもののしきたり日本のしきたりを参照してください。)
 私にすれば、「ああ、そう言う着方もあるのかなぁ。」と言うところです。
  お盆で暇なもので長々と書いてしまいましたが、上記は呉服業界の一般的なことを語ったもので、購入されたきもの、またそのお店に限って申し上げたわけではないと思ってください。

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