45.結城紬にもいろいろある?   
 今夏、はじめまして。ときどきネットでお邪魔している者です。
 きもの初心者なもので、ちょっと気後れはしますが、勇気を出して、お尋ねします。
  実は先日、ある呉服屋のセールにいってきました。 そこで、結城紬を見せていただいたのです。無地の、少し軽い感じのする生地でした。 店員さんは「結城だから、軽いしあたたかい。洗うと光沢が出てくる・・」と言います。 ひと口に「結城」と言っても、重要無形文化財のような物からそうでない物まで、いろいろあるんですよね!?
  その結城紬の証紙は、草の「紬」マークと、機を織る婦人に「古結城」の文字、品質保証 絹100パーセント、でした。詳しく聞くと、本結城ではないことと、よこ糸は真綿で、たて糸は紬糸だということ、それから手織りだと教えてくれたのですが・・。
  ここで、質問です。手織りの証紙が貼っていなくても、真綿を使って織り上げている物は、手織りなのでしょうか?細かいこと、気にしすぎなのかもしれないですけど、気になって仕方ありませんので、よろしかったら、教えてくださいませんか??

 初めに、何度も申し上げている事なのですが、きもの用語、名前にははっきりとした定義があるわけではありません。同じ用語でも違った使い方をする場合もあります。そのことをまず頭に入れておいて下さい。  
  結城紬とは何か、ということになりますが、広い意味では「結城紬は茨城県結城市を中心とした地域で織られる紬」ということになります。
  昔は市町村などありませんでしたので、必ずしも結城市に限ったものではありません。地図を広げてみれば分かりますが、結城市は茨城県の西端に位置し、栃木県小山市と境を接しています。現在織られている本場結城紬の約半数は小山市、南河内町、二宮町の栃木県で織られています。  
  昔はこの地方でも色々な紬が織られた事でしょうが、中でも現在に伝わる結城紬が特産品として結城の城主結城氏が幕府に献上した事もあってその名が高まったようです。
  その為に結城紬という言葉が高級紬の代名詞となったようです。  
  しかし、仰るとおり広い意味での『結城紬』には色々とあります。最も高級な狭い意味での結城紬は『本場結城紬』とも呼ばれますが、重要無形文化財の認定を受けたものです。これは茶色の証紙の貼られたもので、「経緯共に手紡ぎの真綿糸」「手括りによる絣括り」「居座り機による製織」という条件を具え、検査に合格しなければなりません。
  一方、横糸のみ手紡ぎの真綿糸を用いたものもあります。こちらは無形文化財の対象とはなりませんが、広い意味では結城紬と称されています。これも値段はまちまちです。ちょうどハンバーグを作るときに最高級和牛のひき肉を使うのか、筋肉のひき肉を使うかによって品質、味、値段が違うように、同じ結城紬と称しても品質は様々です。  
  最近は無形文化財の証紙を貼らない本場結城も出回ってきているようです。どこの世界でもそうですが、検査を通し証紙を貰うことにデメリットがつきものです。コストがかかること、ぎりぎりで検査を通らなかったものについての評価など、生産者としてのデメリットに反旗を翻す動きがあります。
  良心的な生産者がより安く本場結城を流通させるため、とも受け取れます。  
  ご質問の「手織り」というのは言葉どおりに捉えれば「機械織り」に対する言葉です。糸が真綿であろうと何であろうと「手織り」は「手織り」です。詐欺的に証紙を貼っているのでなければ、それは「手織り」なのでしょう。
  最近は中国の帯が多くなっています。中国では賃金が安いので「手織り」の帯でも安くできます。中国の手織りの帯が良いか悪いかの評価は別として、中国の帯には、これ見よがしに「手織り」の証紙が貼られているのを良く見かけるようになりました。「手織」「本場」「結城」その他の証紙が氾濫しているきらいもあります。  
  どちらにしても、言葉や証紙でどの結城紬が良いのかと決め付けるのは危険が伴うように思えます。証紙についての知識はきもの雑誌を開けばすぐに分かる事ですが、その知識を身に付けた上で、自分でしっかりと見定める目を持ち、信用できる店で品定めをされることをお奨めします。
  大変難しい事と思われるでしょうが、きものはその位難しいです。しかし、知識を身に付ければ大変面白いものです。  
  それから、結城紬は昭和三十年代までは縮み(撚りをかけた糸で織ったもの)が主流でした。その後、平織が主流となって縮みはほとんど織られなくなっていましたが、最近復活して織られているようです。縮みの結城にはいくら品質が良くても無形文化財の証紙は貼られていないようです。益々話がややこしくなりますね。

 さっそくのお返事ありがとうございます! 結城市周辺の物だろうとは思っていたのですが・・昔は地図などなかったので結城市に限ったことではないとのこと・・・読ませてもらいながら、うーむ・と、うなってしまいました。 勉強になりました。どうもありがとうございます。 ひねた見方をすれば、手織りの証紙のない物は手織りじゃないかもしれないのでしょうか??
 大家の旅から旅です。 手織りかどうかの判断は、その絣が経緯絣かどうかで判断できます。
  一般的に、経緯絣は機械織りができません。 この「一般的」と言ったのには、理由がありまして、新潟県の十日町あたりでは、 経緯絣の機械織りがあるからです。 たとえば、十日町産の「夏大島」「夏結城」「夏塩沢」などなどです。 「明石織り」ってのも、ありましたね。
  手織りかどうかの判断で一番、確かなのは、その反物に味があるかどうかですね。 味というのは、言葉を変えれば「人間臭さ」とでも言えばいいのでしょうか。 たとえば、糸自体にも、手引きの手紡ぎ糸にはそれ相応の味があります。 実に不揃いの美しさとでも言いましょうか。
  それにひきかえ、機械でできた紬糸には、それ自体には「味」がなく、 また、美しさも感じられないものです。 とりあえずは、その反物をじーっと見て、観察する事です。 おのずと、その反物の本質が見えてくるものです。 では、またね。(旅)
 手織りの証紙があるものは詐欺ではない限り手織りに間違いないでしょう。しかし、手織りの証紙のないものは手織りでないのかといえば、分かりません。
  最近は「手織り」「手造り」「自然食品」「無農薬」など反機械文明的な、現代人には耳障りの良い言葉が巧みに商売に使われているようです。 旅さんの言うように、手織は手織の良さがあるから手織なのであって、手織イコール高級品と言うわけではありません。
  いいかげんな手織りもしっかりした機械織の方が良い場合もあるかもしれません。証紙、名前に惑わされずに本当に良い物を判断の基準として頂きたいと思います。
 結城さん、旅から旅さんの、おふたりのお言葉に、おもわず、納得!!です。
  そうですね、まずは反物とじっくり語り合って(!?)みますね。 とてもよいお勉強になりました。どうもありがとうございました。

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