424.機織りの職人さんについて   
 はじめまして。 大学で染織文化財の保存について勉強をしている学生です。
  西陣織(特に綴織と唐織)に興味があり、将来はその織りの職人になりたいと考えています。 しかし実際に織ったことがないので、工房や織元さんで修行 ができたらと思うのですが、現在でも弟子入りのような形で 受け入れて下さる職人さんはいらっしゃるのでしょうか?
  西陣織に関しては、全くの素人を対象にした研修などは行わ れていないそうですが、西陣織の組合などにお聞きすれば 職人さんや工房を紹介していただけるのでしょうか?
  賃金の理由などでやめざるを得ない人がたくさんいるという のはとても残念なことと思います。 大学の先生からも文化財の保存の道を勧められますが、やはり 分析などではなく、自分の手で生み出すほうに魅力を感じます。
  大学も4年生になり進路の分岐点にいるわけですが、まともに 織物をしたこともないのに、自分に一番合っている仕事だという 思いがあります。 何かアドバイスをいただければ嬉しいです。
  よろしくお願いします。
 呉服業界に携わる者として、日本の伝統文化を考える者として、織屋・織手の動向には大変関心があり、また憂慮しているところです。
 昨年、西陣の織屋さんと話した時の会話です。  
  私  「どうですか、西陣は。景気はどうですか。」  
  織屋 「いや、人手が足りなくて困っていますよ。」
 この会話を聞けば、西陣は景気が良いのかと思われるかもしれません。しかし、現実は全く反対でした。
 その織屋さんの話によると、今西陣で働く織手の平均年齢は60歳を優に超えています。若い織手がいないので、その数は減少するばかりで人手が足りないというわけです。需要が増えているわけでなく、むしろ減少しているのですが、それを上回って織手が減っているのです。
 原因は、様々あると思うのですが、一つには賃金の問題があるそうです。織手の平均月収は150,000円位。これでは若い人が希望をもって働けないと言うのです。従って、織手は60を過ぎて年金を貰いながら小遣い稼ぎに織る人ばかりになっています。
 その弊害は、単に人手不足と言うに留まらず、商品にも響いているそうです。古参の織手は新しいことにチャレンジする意欲に欠け、この難しい時期に織屋が付加価値の高い商品を創ろうにも織手が付いてこないと言うことです。従って商品があまり魅力のないものになってしまっているそうです。
 このような現状で、十年後西陣がどうなっているかを想像するとぞっとします。若い意欲のある織手が育ってくれることを祈っています。
 十年くらい前に若い女性を一人、西陣の織屋に紹介したことがありました。米沢の米織の織屋で働いていたのですが、織手兼店員のような仕事だったので、本当の職人になりたいと言うことで相談を受けました。職人になれるのならばどこへでも行く、というので方々聞いてみました。
 琉球も聞いてみましたが、沖縄では現地の人を優先的に採用しているとのことでだめでした。
 出入りの問屋さんを介して西陣の織屋に相談したところ、「会うだけなら会っても良い」という返事でしたので訪問させました。
 その織屋の主人は、話をしてどんなにきつい仕事かを説明して帰してやるつもりでいたそうですが、本人の熱意に根負けして採用され、今も働いてられると思います。
 西陣では、「若くて意欲のある職人が欲しい。しかし、現実にはそれほどの待遇で迎えられない。」というのが本音かと思います。
 西陣に竹田しのぶさんと言う先生がいらっしゃいます。私のHPでも取り上げておりますが、(続々きもの春秋9.工房訪問記「HANA工房」)一人ですくい織の作品を作り続けています。可能であれば、訪問して話を聞いてみてはいかがでしょうか。「山形の結城屋さんから聞いて・・・」と言えば分かると思います。HPは私のページにリンクしています。
 組織的に若い織手を育てているのは博多です。「博多織デベロップメントカレッジ」という学校があります。HPは検索していただくと直ぐに出てきます。 こちらは職人の育成とともに博多織の作家として独立する手伝いもしているようです。
 どちらにしましても、生活という意味では大変厳しい世界であることは間違いありません。
 他人の人生に責任を持てませんが、次の時代の優秀な織手が育つことを私は祈っています。

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