511.地入れ、ゆのしをするべきかの判断基準   
 度々、いろいろ読ませていただいてとても勉強になります。 過去レスをなるべく読めるだけ読んだのですが、わからないところがあったので質問させていただきます。
  紬や木綿の糊落とし(地入れ)についてですが、するべきかどうか判断する方法はありますか?
  木綿については、「どうせ洗うなら糊はそのうち落ちるので必要ない」という旅さんのコメントを読みました。 紬に関しては、「湯通し済み」と書いていない場合はなるべく地入れをしておいた方が安全という認識なのですが、糊が残っているかどうかというのは、手触りや水を端っこに少しつけて乾かしてみたら分かるとか、何か判断する方法はありますか??
  それから、ゆのしは蒸気整形という認識なので、基本的に必要ないと思っているのですが、「ゆのしした方がカビなどが出なくて良いと言われたのだけど、しなくても大丈夫なんでしょうか?』と言われました。縮緬です。後染めの柔らかものでも、ゆのしや地入れが必要な場合があるのでしょうか?
  その場合の、判断方法はありますか??
  最後に、有名な洗い張り屋さんで、縮緬を含むすべての反物を伸子+ふのりで仕上げるお店があります。 糊は残さないようにした方が保管上安全と思っていたのですが、ふのりがついたまま仕立てて、カビや変色の問題はおきないのでしょうか??
  たくさんになってしまいましたが、またお時間ございますときに、ぜひご返信をよろしくお願いいたします。

 紬の湯通しは私は実地でやったことがありませんので、知識の範囲ということで聞いてください。
 昔は必ず紬は湯通しをしたようです。しかし、最近はほとんど湯通しの必要が無いようです。原因は、おそらく製造工程の間で十分に糊を落としているのだと思います。
  昔は絹が貴重でしたので羽二重も糊を付けて量目を稼いでいたという話も聞きます。紬も糊が付いていたほうが重く高級に感じるといった感覚が昔はあったのかもしれません。 私の店でも余程のことがなければ湯通しはしていません。ただし本場結城は別です。
  本場結城はふのりで固めてあるのとセリシンを落とす為に本湯通しというものを行います。 「のり」というのは、糸自体にあるセリシンと後付したものがあると思いますが、セリシンは手で触って分かるものでは無いでしょうし、後付した糊が手で触って分かるほどのものは今時ないと思います。

「湯のし」は、反物を仕立てる前の整理という意味があります。
 私の店で紬を湯通しするのは、
 ・紬が余程硬い場合
 ・お客様に「湯通しをしてください」と言われた時です。
 湯のしをするのは、
 ・反物が正常な状態になっていない時
 ・絵羽物を仕立てるとき(折り消し)
 ・絞りの幅出しをするとき
  綿の浴衣は糊を使って所謂「のりの利いた」仕上げをしますが、ちりめんの場合は分かりません(聞いたことがありません)。最終的には糊は残さないと思うのですが・・・。

 ご丁寧にありがとうございます! 大変参考になりました。
  ゆのしに関しては、自信がなかったのですが、今までの認識でほぼ問題ないことがわかって安心しました。
  紬の糊に関しては、たくさん触ってみていろいろと勉強しようと思います。
  とある洗い張りの縮緬の反物を受け取って、アイロンで整形していたところ、蒸気でもまったく縮まず、裾の地の目もガタガタで通せない状態だったのに、霧を吹いたとたんに信じられないぐらいに縮んだ、ということが以前ありました。 それで、その洗い張りの店を調べて行ったところ、テレビなどで有名なお店で、そこのホームページに[伸子とふのり仕上げ]とあったので、このおかしな反物の動きはおそらくふのりが原因だろうと考えたのです。 有名な店だったので自信がなかったのですが、やはり雨が一粒あたったぐらいで着られなくなるような仕立てはしたくないですし、カビやすいリスクなどもやはりあるので、他の洗い張り屋さんにしてもらおうかと思います。 ありがとうございました。

 普段ここには顔を出さないようにしているのですが、私の名前が出ましたので、私の立場として、ご質問にお答えしようと思います。
  ただ、あってるかどうかは、つまり正解かどうかは、私よりももっと本職のかたに聞いたほうが、正確かも、、、という気もするのですが、ま、そのへんのことは差し引いたうえで、お読みくださいね。

 紬にもいろいろな紬があります。 その製織工程のうえで糊をするわけですが、その糊にもいろいろな種類があるのかもしれませんが、私の知っている範囲では、フノリと小麦粉、合成糊などです。 有名な織物でいうと、フノリは泥染めの大島紬、小麦粉は本場結城という具合です。 また、紬によっては、産地による完璧な湯通しがなされている場合もあります。
  私の知る範囲では久米島紬、南風原花織、これらは完璧な湯通しがなされていますので、消費者のかたは湯通しの心配をする必要はありません。 木綿、麻織物もメンテナンスは水洗いがメインですので、くっついていた糊はそのとき、落ちますので、糊落としという意味では湯通しする必要はないと思いますよ。
  ただし、製織工程の最後に張り仕上げを施しているケースがあります。 そのときに、強いテンションをかけて張りをしている場合は、縦方向に異常に伸びている場合がありますので、そういう恐れがあると感じたときには、水に入れるとかして、地詰めをする必要がでてきます。 それらも、経験することによって、自然と体得していくものだと思います。
  また、湯通し済みと書いてあっても、不備な湯通しもあるように感じます。 本結城も、湯通し済みとなっていても、実際のところ、糊が抜けていないと感じられる湯通しもあるように思います。 まぁ、経験的に「触ればわかる」というしかないですが。 たとえていえば、芯のあるご飯って感じですかねぇ。(笑)

 後染めのものは、基本的に糊はかんでいません。 よっぽど巾が縮んでいない限り、湯のしの必要はないと思います。

 柔らかものでも、湯のしではなく、伸子で仕上げをされているのですか? 布の特性を考えるに、巾を一定にするのは、大変だと思うのですがねぇ。 最後の仕上げは、機械のし(湯のし)されてるんじゃないかと思いますよ。

 昔は、頻繁に着て、洗い張りしてを繰り返していたので、フノリによるカビの心配をしなくてもよかったと思うのですが、いまは、かえってフノリをすることは危ないのではないかと個人的には考えます。 ただ、フノリが仕上げ糊のなかでは一番安全であることは確かですが。
  私見に満ちた意見ですので、まちがったところもあるかとは思いますが、どうか、ご容赦のほどを。 では、またね。(旅)

 ご丁寧にありがとうございます。
 なるほど、産地によって糊の種類や抜いてあるかなど様々なのですね。 いろいろと勉強しなければ、と思います。 たくさん触って少しずつ覚えていこうと思います。

 洗うものをお仕立てするときは、完全に縮むまで水に通してから仕立てているのですが、以前、まったく水が入っていかない木綿がありました。 その時はわからなかったのですが、今考えると合成糊か防縮加工か何かだったのかもしれません。 あれは、もしかしたら地入れに出しておいた方が良かったのか、糊が徐々に落ちて水が入るようになって縮んでしまうのではないか、気がかりです。

 湯通し済みでもダメなことがあるのですね! やはりいろいろ触って勉強します。

 ゆうきくんさんのところのレスにも少し書いたのですが、 蒸気で整形できず、裾の地の目が通せないのに霧を吹いたらありえないぐらいに縮みましたので、原因はフノリかなと思った次第です。 やはりメリットがないのにデメリットが多すぎるようですね。

 フノリはまだ安全なのですね! それでもやはり、現代では一度仕立てた袷は何年も解かないのが普通ですから、リスクは少ない方が良いですね。 いろいろ勉強になりました。ありがとうございます。

 藍染の木綿絣などに撥水加工をされているケースが散見されます。 あれは、藍落ちをおそれるあまりの加工などでしょうが、面白くない加工だと想っております。

 縮緬にもいろいろありますよ。 おっそろしく縮むのもありますし、それらの原因はフノリではないですよ。 まぁ、追々と勉強されていくうちに体得されていくと思いますよ。

 では、またね。(旅)

 撥水加工されてるものがあるんですね!! そういう付け焼刃なことをするとファンがどんどんいなくなると思うんですが…。 縮緬については、ちょっと説明不足でした。
  実はそのあと、その縮緬を洗っていつもの店でゆのしに出しました。 そうしたら、普通の縮緬の動きに戻りました。 蒸気で3%ほど縮み、裾の地の目も通せるようになりました。 ですので、バンバンに引っ張って何かで固めてあったのだろうと思った次第です。
  蒸気で全く縮まず、裾の地の目も通せず、なのに霧で12%縮みました。 錦紗とかではなく、二越かなぁ?という感じの比較的地厚なものでした。 フノリではないかもしれませんが、あの不自然な動きは何だったのか気になります。 ちなみに、フノリがまだ安全というのは、変色やカビが比較的少ないということですか?
 そろそろ専門的な話題に入ってきたように思いますので、この掲示板で話す範疇を超えてきたんじゃないかとも思います。 また、次回、機会があればということで、よろしくお願いします。 では、またね。(旅)
 どうもありがとうございました。 いろいろ勉強になりました。

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