『石持 』

  「石持」と書いて「こくもち」と読む。
  石持は留袖、喪服、男物紋付地などに紋の入る部分をあらかじめ白抜きにしたものである。白い丸の部分に紋を描き白の部分を染め潰して紋に仕上げる。 通常、色無地や付下、訪問着に紋を付ける場合は色を抜いて紋を描く。
  しかし、黒地の場合、真っ白に色を抜くのが困難な為に紋の入る部分を染めずに白く残しておく。従って、石持は主に黒地のきものに施す。黒留袖、喪服、男物の黒紋付、男児祝着など。男児祝着の中には紺色や茶色に石持をしたものもある。
  実は、この「石持」という名称は、もともと「黒餅」だった。白地に黒の丸を黒餅紋、黒地に白の丸を白餅紋と称していた。つまり、石持は正しくは「白餅」である。それが何故「こくもち」となったのか。
  白餅も黒餅もどちらも本来の紋の機能は果たさず、紋を上描きするための仮のしつらえであった。それ故に正確に区別する必要もなかった事情もあるかもしれないが、白餅も「こくもち」と称した。そして、「黒餅」は「石持」にすり替わってしまった。何故すり替えたのか?
「石持」は「石を持つ」、すなわち武家社会で言う知行取りに通ずる。石高の大きさは出世の度合いを表す。そんな訳で「黒餅」は「石持」にすり替わってしまったらしい。 言葉の使い方の曖昧さと日本人のしゃれ好きが生み出した言葉の典型である。 (参照:「きもの博物館18.石持ち」)

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