明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅰ-ⅳ 上代の設定

ゆうきくんの言いたい放題

小売屋が販売する価格を「上代」と言う。この上代はどのようにして決められるのだろうか。

上代は仕入れた価格に一定のマージンを上乗せしたものである。つまり、

上代(販売価格)=仕入れ価格+マージン

である。

着物に限らずどんな商品でもこの方程式で上代を設定する。上代が最初から決まっている商品も多い。100円のガムはどこへ行っても上代は100円あり、200万円の自動車はどこのディーラーに行っても200万円である。安売り店やバーゲンでガムが90円、交渉で自動車が190万円だったりするけれども、設定された上代価格は決まっている。

魚屋や野菜などの相場物は、その時々の相場によって上代は変るけれども、決して他の店よりも突出した価格で販売することはない。大根1本、サンマ1匹のその時々の相場価格は消費者が分かっているからである。

しかしながら、呉服業界ではまことに奇妙な上代設定がなされている。

上代価格は仕入れ価格にマージンを上乗せしたものであることは既に述べた。このマージンは、普通業界によって大体決められている。アパレル業界では、仕入れ価格は上代の何パーセントと決められている。小売屋とメーカーの力関係等で仕入れの価格にばらつきもあるが、それはせいぜい5パーセント程度である。そしてそれは小売店の利幅の問題であって、商品を買う消費者はどの店でも同じ価格である。

呉服の場合、マージンは個々の小売店の判断で決定される。そのマージン率は、多い店と少ない店では5倍程度違う。すなわち同じ価格で仕入れた商品をA店では10万円、B店では50万円ということになる。

それ程マージン率に差があっても成り立っている、呉服業界と言うのはまことに奇妙な業界である。

何故このような事がまかり通るのか。同じ商品を5倍の値段で買う人はいないと思うのだけれども、それが成り立っているのが呉服業界である。

一番の理由は、残念ながら着物が消費者から遠い存在となり、消費者が着物の価値を判断できなくったことにある。それは消費者の責任ではなく時代の流れとも言える。悪いのはそれに付け込む呉服業界である。

消費者が物の価値が分からないのだから、いくら値を付けて売っても構わない・・・そんな倫理に反することをしてはいけないのだけれども、呉服業界ではそのような事を平気でしている。

例えば、帯締の価格で言えば、常識的なマージンで言えば上代が1000円程度の中国製から10万円を超えるような手組みの帯締まである。さすがにそこまで品質が違えば消費者にもその良し悪しは分かるだろうけれども、1000円の帯締を5000円の価格を付けても、それを見抜く消費者はまずいないだろう。

市場に出回っている着物の価格はそれほど様々であることを知っていただきたい。

そして、消費者を卑下するわけではないけれど、着物に対してもう少し賢くなって欲しい。私は「きもの春秋」や「質問箱」の中で再三その事を説いてきたつもりだけれども、真意は伝わらなかったように思えます。

WEBで相談を受けて、きちんと説明しても後日、

「奨められてこの着物を〇〇円で買いました。」

と言うメールを頂戴する。

「説明したはずなのに、何故その着物を〇〇円で・・・。」

と思うことしきりでした。   (つづく)

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