明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅰ-ⅴ インターネットの価格 (その2)

ゆうきくんの言いたい放題

①倒産品

企業が倒産すると、その企業の財産は整理処分される。着物を扱う小売屋、問屋、染屋、織屋も例外ではなく財産は処分される。在庫として持っている着物も処分される。在庫が処分される場合、その簿価(仕入値)で処分されることはなく、大抵の場合安い価格で他の業者に売り渡され現金化される。

処分品を請け負うのは呉服業界の企業とは限らない。債権をもった業者が少しでも回収しようとして在庫を引き受けたりするが、それは二束三文で引き取られる。20万円で仕入れた加賀友禅も5,000円で・・・と言うこともある。

私も20年ほど前に経験がある。

ある日、取引先の小物の問屋から沢山の商品が送られてきた。注文した覚えはない。開いてみると、それらの商品は注文していないどころか、古い商品、季節はずれの商品などが詰まっていた。送り先を間違って送ってきたのだろうと、放って置いた。

翌日ニュースが入ってきた。「和装小物の問屋〇〇倒産」

それらの商品は倒産前日にその問屋が送ってきたものだった。私は経験が無くどうしてよいのか分からなかったが、そのままにしておいた。

数週間して、法律事務所から手紙が来た。倒産した問屋の破産管財人である。

「〇〇株式会社の貴社に対する売掛金△△円は、全額支払うべきものなので××日までに支払うように。」との内容だった。

私の店ではその問屋には実質的な買掛金はほとんどなく、請求してきた金額のほとんどは倒産前日に送られてきた商品の代金だった。」

「ふざけるな。」誰でもそう思う。私は紙に筆で大きな文字でその法律事務所にFAXした。

『倒産前日にガラクタを送って来て金を払えとはなんだ。返して欲しけりゃ返してやるから取りに来い!』

もちろん、日付の入った伝票も一緒に送ってやった。

翌日、法律事務所から電話が掛かってきた。法律事務所から電話が来たと言うので私はけんか腰で電話に出た。しかし、相手の口調は実に丁重だった。

「おっしゃることは良く分かりましたが、何とか商品を引き取っていただけないでしょうか。」

余りに真摯な態度に、

「商品もろくろく見ていませんので、商品を見てから検討します。」

そう言って電話を切った。

改めて送られてきた商品を見てみると、とてもまともに売れそうにない商品である。伝票にはいずれも正価の半額から7割程度で記載されている。それでも売れそうにない商品ばかりである。一つ一つ商品を見ながら半額から7割引でも売れそうな商品を選んで伝票に丸を付けて法律事務所に送った。

「丸を付けた商品は引き取ってもいいです。」

電話でそう言うと、

「いや、そういうことではなく全商品を引き取ってもらいたいのです。」

「そんな、売れない商品を買うバカはいないよ。」

そう言うと、相手は更に、

「それでは、いくらだと引き取ってもらえますか。」

弁護士は和装小物の価値も分からないし、商売も分からない。彼らの使命は、商品を全て現金に買えて会社を清算することである。その意図は良く分かった。

「伝票の価格の何割だと引き取ってもらえますか。」

更に畳み掛けてくる。

「わかった、もう一度電話する。」

そう言って再度商品を見た。値段さえ下げればワゴン商品やイベントで売れないことはない。ただし、その価格は正価の8割~9割引の世界である。

法律事務所に電話して

「伝票の三分の一なら引き取るよ。」

そう言うと

「それではそれでお願いします。」

数日後、法律用語が書かれた文書が送られてきた。内容は、

「売掛金**円を支払うことによって〇〇株式会社との取引は全て精算される。」

という物だった。その時当社で仕入れた商品は、正価の十分の一足らずであっただろう。ただし、商品はまともな商品ではなく私の店でも二束三文で売り払った。

私の店に送ってきた商品は処分品ばかりだったけれども、その問屋ではまともな商品もあったはずである。それらの商品も二束三文で売り払われて現金化され、廻りまわって市場に出てゆく。

呉服問屋や呉服屋が倒産すれば、高価な着物も二束三文で処分される。処分された商品が市場に出るとき通常の価格より遥かに安い、信じられない価格で売られる。

インターネットでは価格の比較が容易である。それらの商品はバッタ商品として安価に売られている。

(つづく)

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