全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅱ-ⅳ 展示会 (その6)
④確約
今、展示会で集客する方法として「確約取り」というのが行われている。これは15年位前から行われているらしい。
私は「確約取り」という言葉を知らなかった。かなり以前に新規の問屋が店にやってきた時に、
「御店で展示会でどのように集客していますか。」
と聞かれた。私の店では昔やっていたような大掛かりな展示会はしていない。言葉を濁していると、
「確約はなさっていますか。確約の商品も当社では用意しています。」
私は何のことか分からなかった。私の要を得ない態度を見て、その問屋はあきれたような、拍子抜けしたような表情だった。
「なんだ確約もしていないのか。遅れているな。」
とでも思ったのだろう。
さて、「確約取り」とは次のようなものである(らしい)。
展示会を開催するに当たって事前に呉服屋の社員が展示会の案内状を持って得意先をまわる。場合によっては新規の客をも勧誘する。これは集客の為今までも行われていたが、次第に集客の歩留まりが悪くなってきたのだろう。そこで考えたのが「確約取り」である。
呉服屋は確約の商品を用意してお客様の勧誘に回る。お客様に確約の商品を格安で販売すると謳い展示会に来てくれるよう奨める。その確約商品の購入を希望する人には展示会場で商品を渡す。そして、予め商品代金を預かるのがミソらしい。
例えば、展示会の案内に行った客に50,000円のバックを展示会で5,000円で販売すると客に告げる。そして、5,000円を預かり、その客が展示会場にいらした時に商品を渡す。
まことにうまい方法を考えたものである。格安の商品が欲しい客は展示会に足を向けることになる。いや、足を向けざるを得なくなるのである。既に代金は支払っているのだから。
確約の商品もいろいろと開発され進化しているらしい。同じような商品では客は寄らなくなる。手を変え品を変え消費者が喜ぶような商品を確約品として用いるのである。
展示会で様々な演出をしても、ノベルティを工夫しても、それでも来場する客は減っている。「それでは」と、次に繰り出したのが「確約取り」ということだろう。
商売と言う目で見れば大変巧妙でうまいことを考え付いたものである。法に触れるでもなく、消費者の心を巧く突いている。これを商売上手と言うかも知れない。
しかし、私は呉服を商う者として問題が多いように思う。
展示会で「確約取り」を奨める問屋の口からは、「いかにして確約取りでより多くの集客を誘うか」「確約の商品は何が一番効率が良いか」などの話は出てくるが、商品(着物)の話は出てこない。呉服の問屋であれば、
「当社はどこよりも安いソロバンで出しますので、お客様に還元して安く提供してください。」
「うちの染を見てください。どこの染屋よりも良い職人を使っています。」
などと商品の価格や品質が優れている話題が出そうなものだが、そのような話は一切ない。
「如何に展示会に客を集めるかが問題だ。着物を買う気がなくて確約商品だけをもらいにきた人でも、会場に来てもらえればこちらのものだ。何とか買わせる術はいくらでもある。商品なんてどうでもいい。」
と言っているように私には聞こえる。