全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅱ-ⅳ 展示会 (その7)
展示会商法の本質
展示会は、今の呉服業界にとってなくてはならない商法になっている。むろん呉服屋によってその比重は違うが、ほとんどの呉服屋は展示会がなければ立ち行かなくなってきているのは事実である。
もともと展示会は、店頭販売を補充する売上増進の手法として用いられてきたが、店頭販売と展示会は、いつしか主従が逆転、あるいは展示会での売上がほぼ100%を締める呉服屋も出てきている。
そして、展示会で扱われる商品や演出、ノベルティ、確約など、本来重視すべき商品の品質や価格とはかけ離れたことに注力されている。
売上増進の努力をするのは商人の生業だが、商品をないがしろにしてはならない。
売上が上がらなければ更に展示会に工夫を凝らす。それが次第にエスカレートしてきている。痛みに耐え切れずモルヒネを打ち、それを続けるうちにモルヒネなしでは生きられなくなるのと同じである。根本的な痛みをなくす努力をしていないのが現在の呉服業界である。
フランス料理を餌に客を集める。タレントや歌手を呼んで集客するなど莫大な経費を掛けて着物の価格を吊り上げて消費者に販売するという手法は犯罪とは言えない。「客が納得して買ったのだから」といえばその通りである。
しかし、更にエスカレートして犯罪と言えなくもない、犯罪とは紙一重の展示会も行われている。
一頃テレビでも話題になったことがある。展示会に来た客を販売員が取り囲み契約を成立させる。客の靴を隠して契約が成立するまで客を帰さない等々。その時客はトイレに駆け込んで携帯電話で警察に電話して助けられたと言う落ちが付いていた。
それらはあからさまに犯罪、又は犯罪に近いものとして誰でも認識できるけれども、もっと軽度な(しかし重大な)犯罪といえる行為も行われている。
私は江戸小紋について相談されたことがある。二十数万円で買ったという型染めの江戸小紋はプリントの江戸小紋だった。私の店では五~六万円の代物である。その江戸小紋を買った呉服屋からは型染めで価値のある物と説明されたという。しかし、少し知識のある人が見ればすぐにプリントと分かる商品である。
価格については本人が納得して買ったと言えばその通りかも知れないが、プリントの江戸小紋を型染めだと説明したことは明らかに犯罪である。同じような事は他にもあるらしい。
型物の小紋を手描きと偽る。なんでもない訪問着を人間国宝の作品だと偽る等々。それは騙し以外の何物でもない。買った(買わされた)人は高い代償を払っている。
何故そのようなことがまかり通るのか。
呉服業界では売上を創る為には何をしても構わないという風潮があるのは否めない。
それと共に、その風潮が長い間続き、販売員自身に着物の知識が欠落している面もある。展示会に集客する要員は着物の知識を持ち合わせない。したがって、なんでもない着物を人間国宝の作品だと言っても本人は罪悪感も何もないのだろう。
つづく