明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅳ ⅳ 寸法について(その5)

ゆうきくんの言いたい放題

以前、浴衣を仕入れに行った時、異常に裄丈の長い既製浴衣があった。男物で裄が2尺3~4寸位あったと思う。広幅の生地を使い、袖丈よりも袖巾の方が広い。まことにおかしな形の浴衣だった。わざわざ広幅の生地を使ってまで袖巾を広くしているのである。

何故そのような既製浴衣を創ったのか。担当者を問い詰めると、某百貨店の売り場からの要請で創ったという。呉服を担当している者がわざわざ広幅の生地を使って、特定の人用ではなく、既製の浴衣として販売しようとしていた。着物を理解しているはずの人が何故そのような浴衣を創らせるのか理解に苦しむ。呉服に携わる人達が自ら着物を破壊している。

成人式では裄の長い振袖を見かける。最近の若い女性は昔に比べるとスタイルが良い。健康的でないくらいスタイルの良い人も多い。そんな人達が裄の長い振袖を着ているのを見ると、「後巾はいくらだろう。肩幅はどれだけ採っているのだろう。」と疑問に思う一方、「華奢な身体に肩幅の広い振袖ではさぞ着難かろう。」と人事ながら思ってしまう。

何故そのような振袖がまかり通るのか。仕立てた呉服屋は、お客様の要求に迎合したか、それとも着物を売る人自身が寸法の知識がないかどちらかなのだろう。どちらにしてもこのままでは着物本来の形、着易さが無視されて、益々着物は毛嫌いされていかないのか私はとても心配である。

きものの正しい知識を伝授するはずの人達が日本のきものを乱しているように思える。日本人の体格の向上と共に、きものの寸法も自ずから変っていくのは否めない。しかし、本来のきものの形を否定して、いわばいいかげんな寸法をまかり通させようとする姿勢は反省を要する。

将来、着物の形は現在とは似ても似つかないものになってしまうかもしれない。その時私は呉服屋はとてもやってはいられないだろう。

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