明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅳ ⅵ TPOで着物は崩壊しないか(その2)

ゆうきくんの言いたい放題

「織の着物に織帯を合わせて良いのか、悪いのか。」それは議論する価値に値しません。というよりも、議論には馴染まない命題です。この命題について少し考えてみましょう。

先に申し上げたように、織物の着物に織帯を締める人はごく普通にいます。紬に博多献上帯を締める人はいます。それは世間一般に認められています。

命題を否定する場合、一つの反例を揚げさえすればその命題が否定されることは、数学を勉強した人であればわかることです。「紬に博多帯」の反例を揚げることで「織の着物に織帯を合わせて悪い。」の命題は否定されたことになります。

では「織の着物に織帯を合わせて良い。」が正しいのか、と言えば、きもののTPOはそれ程単純なものではありません。「織の着物に織帯を合わせて良い。」が正しいとすれば、「どのような織の着物でも、どんな織帯でも合わせることができる。」と言うことになります。これは真実でしょうか。

同じように「訪問着には袋帯を合わせなさい。」と言われたとします。では、訪問着にはどんな袋帯でも合わせられるのでしょうか。袋帯には非常に格調の高いものもありますし、普段着用の紬の袋帯もあります。「訪問着には袋帯を合わせなさい。」というアドバイスに従って、染の訪問着に紬の袋帯を締める人はいないでしょうか、その可能性は否定できません。「織の着物に織帯を合わせて良い。」が正しいとは言えても、それには条件が付きます。つまり必要十分条件を満たしてはいないのです。

表題に挙げた「TPOで着物は崩壊しないか」の一番目の心配は、非常に単純なルールが流布されてはいないか、そしてそのレベルで議論されてはいないか、ということです。着物初心者に対するアドバイスが、単純であれば、それを鵜呑みにした人たちがとんでもないTPOを振りかざす可能性が出てきます。口頭でのアドバイスもそうですが、きものTPO早見表など活字化されたものは、その可能性が高くなります。頭のどこかに「活字は真実を伝えている」と言う先入観があるでしょうから。

次に心配なのは、着物のTPOを語る人は自分の説が絶対であると信じて疑わない人が多いように思えます。自分の説を信じているばかりではなく、他人の説には耳を貸さない人たちです。

例に挙げた「紬には染帯以外締めてはいけない。」の人は、誰からそのような事を教えられたのかはわかりませんが、その説が絶対であり真実であると信じて疑わないようです。

つづく

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