全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅳ ⅶ きものが分かるきもの屋はどれだけいるのか(その3)
ゆうきくんの言いたい放題
寸法は呉服屋がお客様にきものを納める時もっとも気を遣う。実は私は採寸に余り自信がない。自信がないと言ってしまうと呉服屋として不合格と思われてしまうかもしれないが、きものの寸法は着る人の好みに左右されるために、如何に最新の注意を払って採寸したとしても、「ほんとうにお客様に着易いと言ってもらえるだろうか」と言う思いが消えない。
「この前仕立ててくれた着物、寸法がぴったりでした。」と言った言葉を聞くまでは落ち着かないのである。
「この前の着物、寸法はいかがでした。」とお客様に聞くと、「あの着物まだ着ていないんです。」などと答えられると、裁判の判決が先に延ばされたような気にもなってしまう。
きものの商品知識や仕立てについて、消費者が頼れるのは呉服屋である。しかし、知識のない呉服屋が増えれば、呉服屋の言うことを金科玉条と受け止める消費者はどうなるのだろう。誤った知識が消費者の間に次第に広まってしまう。自分が聞いた知識が全てと他の人の言うことを顧みない人同士が益々きものの世界を歪めてしまうのではないだろうか。
良心的にきものを守ろうとしている人たちが逆に異端視されることさえも考えられる。
きものは日本人が長い年月をかけて築き上げてきてものである。先人たちの知恵と努力で今日のきものがある。それを全て理解することはとてもできないことではあるが、呉服業を生業とする人たちは、少しでも正しく理解する努力をして、それをお客様に伝える義務を帯びているのではなかろうか。売る為だけの技術を磨き、きものの行く末をないがしろにする呉服屋は猛省してもらいたいと思う。