全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅳ ⅷ 減少する商品(その2)
実際に名古屋帯を仕入れようと問屋に行くと、名古屋帯は本当に少ない。数が揃っていても、せいぜい2~3社の織屋の帯しかない。織屋によって帯の表情には特徴があり、同じ織屋の帯は柄が違えど雰囲気は同じである。同じ山に積んである同じ織屋の名古屋帯を数本見れば、その山の帯が必要かどうかわかってしまう。興味が湧かなければ、同じ織屋のすべての帯の柄を見る気にはなれない。
問屋によって取引している織屋が違うので他の問屋に行って探すこともできるが、どの問屋も商品の数は多くない。
こう言った商品の減少は織の名古屋帯に止まらない。染帯もしかりである。
昔は染帯も織の名古屋帯同様にたくさんあった。染色工芸作家が創った高価な染帯から、普段に締められるような染帯まで、昔は問屋さんに所狭しと並んでいた。しかし今は問屋に行っても染帯はろくろくない。「染帯は・・・。」と尋ねると、「こちらです。」と案内されるが、やはり名古屋帯と同じく同じ染屋の染帯が一山あるだけである。高価な染帯を前に、「もっと安いのは・・・。」と聞いても、「安い染帯は創っていませんよ。」と言う答が返ってくる。
名古屋帯や染帯に限らず小紋や紬、その他の商品についても同じことが起こっている。きものに関するお客様の要望に100%応えたいと思うのだけれど、商品の感性や価格の面においてボロボロになった障子のように、あちこちに商品の空白ができてしまっている。きものを選ぼうとすると、その選択肢はとても偏狭になっている。
初めてきものを着る方やこれからきものを揃えようとする方にとってはそれほど不便を感じないのかもしれない。どのようなきものを薦められても「きものはそんなもの」思うかもしれないから。しかし、きものは本来晴着から普段着まで、高価な工芸品から普段の汎用品まで、夏でも冬でも四季を通して着ていたもので、その場に合う着物や帯があった。
今日着物を取り巻く状況は昔とは大きく変わってきている。数的にもアイテムでも商品が減少した中で、それでもお客様の要望に沿った商品を探し提案するのは呉服屋の使命と思う。しかし、今後益々メーカーの廃業が進み、工芸品のような高価なきものしかなくなったり、「帯は袋帯しか織っておりません」等と言う事態にならないとも限らない。そうなれば、きものはもはや生きた日本の文化とは言えなくなるだろう。
織屋さん染屋さんをはじめとするメーカーの方には頑張っていただきたいと思うと同時に、小売店も商品の仕入れに対する努力を重ねなければならないと思うのである。