全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅵ-ⅵ 古い着物はどうしたらよいか (着物のメンテナンス)
「古い着物はどうしたらよいのでしょう。」この質問はよく頂戴する。相談の内容は様々で、「古い着物」と言っても、「親からもらった着物」「他人から譲られた着物」「古着屋で買った着物」などなど。
また、「どうしたらよいか」も様々である。「どうして処分したらよいか」と言う人もいるし、「自分の寸法に仕立て替えられるのか」と言う人もいる。「洋服に仕立てられるか」と言う人もいるし、「何かにできないか」と言う人もいる。
いずれも現物を見せていただければ適切なアドバイスはできるのだけれども、それ以前の問題として「古い着物はどうしたらよいのか。」と言う言葉の裏には、否定的な諦め感といったものを感じさせる人が多い。「こんな着物どうしようもない」「こんな着物もらったけれども・・・」と言った感情である。
きものに興味のない人が、親から、他人から着物をもらえば、そのように思うかもしれない。そこには、着物が生活と縁遠くなってしまった今日の社会環境とともに、着物に対する無理解がある。この着物に対する無理解は、決して消費者が責められるべきものではなく、むしろ我々呉服業界にその責任があると思っている。もらった着物、いらなくなった着物をどのようにすればよいのか。それは呉服屋が消費者に丁寧に啓蒙していかなければならないし、その義務がある。しかし、昨今の呉服屋は商品を売ることのみに専念して、きもののメンテナンスを二の次にしているように思う。
「古い着物はどうしたらよいのか。」と相談に来たお客様にアドバイスをすると、「そんなことができるのですか。」「そんなに安くできるのですか。」と言う言葉が返ってくる。また、「お宅で買った着物ではないのですが」と前置きしてくるお客様もいる。本来呉服屋は、きものを売るだけではなく着物全般のメンテナンスを受け持っている。私の店でも、他で買った反物(と言うよりも、いつどこで買ったのか分からない反物)でも、仕立てやメンテナンスは行っている。そういう意味ではもっと呉服屋を利用してもらいたいと思っている。
きものは洋服と違って、着古したものでも大切に扱えば末永く利用できる(必ずしも着ることではなくても)事を広く消費者に理解してもらう必要がある。
着物は一枚の布、幅40cmあまり、長さ13m余りの一枚の布から仕立てられる。直線裁ちが基本で、曲線に裁つことはほとんどなく余り布もでない。用尺が長ければ、長い分は「内揚げ」として縫い込んで、仕立て替えに備える。それでも長ければ余り布は残るが、切れ端ではなく、一枚の布として残るので、捨てる生地はなく必要に応じて後で利用される。
必要のなくなった着物を解けば一枚の布(反物)に戻る。汚れた着物を洗い張りする場合、解いて羽縫いをする。元々の反物を仕立てる時に裁ったように生地を並べて縫い合わせるのである。それを洗い、きれいになった生地で再びきものを仕立てる。時には前とは違った寸法で仕立てる。必要であれば色を染め変える等、洋服では考えられないことを着物では常識として行われる。
では、具体的に着物の仕立て替えや加工はどのようにできるのか、古い着物はどのように活用できるのかを考えて行こう。