明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅵ-ⅵ 古い着物はどうしたらよいか (着物のメンテナンス) (その14)

ゆうきくんの言いたい放題

【まとめ】

古い着物や着なくなった着物の対処法として具体的なことを書いてきたが、ここでまとめてみよう。一口に「古い着物」「着なくなった着物」と言ってもケースは様々だけれども、次のようなパターンに分類できる。
① 今自分は着物を着ないのに、昔親が作ってくれた着物や親の形見の着物がタンスに眠っている。
② 譲られた着物が沢山あるけれども、多過ぎてどれを着てよいのか分からない。
③ 着たい着物があるけれども、シミや破れがありそのままでは着られない。
④ 譲られた着物があるけれども、寸法(特に身丈、裄)が合わないので着られない。

まず①のケースについて考えて見よう。

着もしない着物がタンスに山ほど眠っているのは珍しいことではない。昔と違って、着物を着なくなった今日、着物に興味のない人にとっては、親のきものなど何の興味もない。このような方々にとっては、タンスを占めている着物をどのように処分するかは頭を悩ませる問題のようだ。しかし、このような方々は私どものような呉服屋にいらして相談されることは余りない。時折「古着は引き取ってもらえますか。」とやってくる人はいるが、引き取ってもらえないと分かると早々に帰ってしまう。

中には、ごみ同然に処分してしまう人もいると聞くが、処分するにしても手間が大変だろうと思う。

また、古着屋さんに二束三文で処分してしまう人の話も聞く。どのような着物を処分したのかは分からないが、作った時の価格からすればただ同然と言えるものも多いだろう。しかし、いらないものを
「置いていてもしょうがない」
と思えば持って行ってもらうだけでもありがたいのだろう。
以前、東京の方から相談されたことがあった。
「着物には興味があり、その内に着たいと思うのだけれども、今は忙しくて着る時がない。叔母からたくさんの着物を貰ったけれども、どうしたらよいか分からない。」
と言うものだった。どうしたらようか教えてほしいとの事だったので、とりあえず全部送ってもらって私の所見をお伝えすることにした。

送ってきたのは段ボール箱四箱分だった。紬から訪問着まで、羽織、コートから既成の防寒コートまであった。私は、それらを一つ一つ点検して分類していった。

全て取っておくことはできないだろうから、仕立て替えや丸洗いをしても取っておくべき価値のあるものをまず選び出した。中には少々古いけれども、手描友禅の訪問着もある。

それから、それらにはシミや破れなどの瑕疵がないかどうかを調べた。古いだけに、シミや汚れは取れない可能性が高い。良い物でも、目立つところに大きなシミがあっては着る事はできない。
そうして選び出した着物を今度は寸法の面から分析した。そのお客様は以前浴衣を仕立てたことがある。仕立て替えをした場合、その寸法が確保できるかどうかを調べた。

特に検査するのは、身丈、裄である。寸法が短ければ、内揚は採っているか、反物幅は十分にあるのかなどである。また、染物の場合はヤケていないか。変色していないかを調べる。裄を出したり身幅を出したりすると色に差が出てしまうからである。

そうして数着(三着だったと思う)選び出して、加工して取って置くようにアドバイスした。結局、その三着を仕立て返して納めさせていただいた。もちろん他の着物はお返しした。加工して納めた着物は、今頃次の出番を待ってタンスで眠っているはずである。あるいはもう活躍しているかもしれない。

タンスに眠っている着物の中には、捨てるには惜しい、すばらしい着物も含まれている。「着ないから捨ててしまう」のは簡単だけれども、捨てる前に呉服屋さんに相談してみたらいかがかと思う。自分が着なくても次の世代に伝えられる着物も含まれているかもしれないから。

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