全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅵ-ⅵ 古い着物はどうしたらよいか (着物のメンテナンス) (その15)
②の場合(とりあえずシミや破れなどがないものと仮定して)、きものをくれたのが親であれ叔母であれ、また他人であれ問題となるのが寸法である。身長や体形が極端に違う人から貰った着物はそのままでは着られない。しかし、同じ人から貰った着物が必ずしも同じ寸法で仕立てられているとは限らない。一つ一つ寸法を当ってみなければならないのだけれども、それでは時間が掛かる。
まずやるべきことは、寸法に関わらず自分が着てみたい着物かどうかで篩にかけてみることである。着てみたい訪問着や締めてみたい帯、素敵だと思うコートなど、まず自分の目で選んでみる。数が絞られれば寸法の検討は容易である。
身丈や裄の変更は可能かどうか。裄出しや仕立て替え(身丈、身幅の変更)にはいくらぐらいかかるのかを調べて対処すればよい。加工の詳細や金額は呉服屋に相談して、どのようにするか(仕立て返して着たらよいかどうか等)を判断されては、と思う。
篩に掛からなかった着物は、自分が着たくないのであれば無理して加工する必要はない。全て処分してしまうという手もあるだろう。しかし、その前に誰かに(呉服屋さん等)見てもらってはどうだろうか。①で記したように、次の出番を待つべき着物があるかもしれないから。もしも、残してある価値のある着物があれば、丸洗い等の処理をしてタンスに眠らせておくことを進めたい。
次にシミや破れのある③のケースについて。
取れないシミや破れがあるからと言って、直ぐに捨ててしまったり処分するのは早計である。着物は解いて洗い張りをすれば元の反物に戻る。シミや破れのある着物は、元通りに仕立て替えるのは困難だけれども、その着物にとって第二の人生を選択できる場合もある。
まず目の前にあの着物の中から、自分が好きなものを選ぶ。②のケースと違って必ずしも「着たい着物」ではなく、「好きな柄」「好きな生地」という感覚で。
選んだ着物をどのように加工するのかはシミの位置や破れの位置によってケースバイケースである。中には仕立て替えのしかたによっては、そのまま着られる場合もある。
例えば絣や紬の場合、シミが軽度で裏まで通っていない場合は、身頃を裏返しして仕立てられる。身頃だけでなく、袖も同じで、軽度なシミは裏返して仕立てる。また、裏返せば上前は下前となる。従って、上前のシミは、より目立たない下前に移すことができる。袖口近くにある目立つシミを袖付けの目立たないところへ移すこともできる。
破れや擦り切れも同じである。裏返して目立たない場所に移すことができる。そして、破れや擦り切れの場合は補修することも可能である。襟の裏から生地を掻いて破れや擦り切れを補修する。
これは、染物では難しいが、普段着として着る紬類であれば、妥協できる選択肢もふえるので、検討する余地は十分にある。
染物やしみの目立つ紬の場合は、解いて他の物に仕立て替えを考えなければならない。シミのある使えない部分を除いてどのくらい用尺が残るかで判断しなければならない。小紋を解いて染帯に仕立て替える。紬を羽織や茶羽織に仕立て替える等。様々考えられる。ただし、長着を羽織にする場合は、衿に剥ぎが入る場合もある。「完璧に仕立て替える」と言う気持ちを妥協させれば考えるのも楽しいし、昔の人はそうやって着物を長く大切に扱ってきたのである。
好きな染物や織物であれば、バックや小物を作るのも一興である。