全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅵ-ⅵ 古い着物はどうしたらよいか (着物のメンテナンス) (その16)
次に④について考えて見よう。譲られた着物、特に祖母の時代など昔の着物の場合は寸法が全体的に短いものが多い。これには二つの理由が考えられる。
現代人は昔の人に比べて体格が良く、昔の人は小さかったことが挙げられます。
織田信長の妹、お市の方は身長165cmで、当時としてはとてつもない大女と言われていました。当時の男性でも160cmに満たない人も多かったわけですから今とは大分違います。もっともこれは400年前の話ですが、それでもここ100年位の間に日本人の体格は急激に変わりました。明治生まれの私の祖母は158cmでしたが、その当時は背の高いほうで150cmに満たない人も多かったようです。しかし、今では160cmは普通で170cmを超える女性も珍しくはありません。
165cmの人が155cmの人の着物を着るにはやはり無理があります。
昔の人と着物の寸法差が大きい理由に着物の採寸法が変わっていることにあります。
問題となるのは主に身丈と裄です。身丈は、着る時にお端折を作りますが、昔は腰紐を文字通り腰のあたりに、下に締めたのですが、最近は着付け教室でも腹のあたりに締めさせるところも多いようです。従って同じ身長の人でも、昔の人よりも現代の人の方がお端折を大きく採りますので身丈が長く必要になります。
裄に関しては、現代人は昔よりも裄を長く採る傾向にあります。(続々きもの春秋 14.きものの裄丈について 参照) 洋服を着慣れた現代人にとっては裄を長めにしたくなるのはとうぜんかもしれませんが途轍もなく長い裄寸で仕立てをする人もいる。
さて、身丈が短い場合は内揚げがあるかどうかが問題である。内揚げを伸ばして身丈を確保できるのであればそれでよし。足りない場合は着物の鷹揚さで、身丈をいっぱいに仕立ててお端折を短く、すなわち腰紐を下にして着れるかどうか。着てみたい着物であれば少々我慢して着てもらいたい。
裄が短い場合は、これはどうにもならない。長い余り裂があれば、剥ぐこともできるが、古い着物の場合、余り布が残っていることは少ない。
ただし、裄の問題として前述したように着物の裄丈としては以上に長い裄丈を寸法としている人もいる。その場合、裄丈の寸法を再考してみてはどうだろうか。許容できる範囲であれば、裄丈をいっぱいに採り、既成の襦袢で着てみるのも良いでしょう。
ここでもやはり呉服屋さんと納得の行くまで相談して進めることが大事です。