全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅵ-ⅵ 古い着物はどうしたらよいか (着物のメンテナンス) (その3)
絵羽物は着物全体で一つの柄を成すもので、柄付けが縫い目を越えて屏風絵のようになる。訪問着や留袖、付け下げがそれにあたる。柄の位置が決められているために白生地を着物の形に裁ってから柄付けをする。小紋の場合は、身丈の長さに応じて反物を裁つけれども、絵羽物の場合は、着る人の身長がわからないので十分な身丈で絵羽付けする。従って仕立てる時には長い分内揚げをする。余計な分は縫い込んでおくのである。
仕立てる前の仮絵羽状態で、絵羽物の身丈は4尺5寸から4尺7寸(170cm~178cm)ある。女性の着物の身丈は、身長位が標準なので、たいていの女性は内揚をして十分に仕立てられる。身長160cmの人が仕立てようとする訪問着の身丈が170cmの場合、10cm短くするために5cmつまんで内揚をする。
絵羽物は身丈(裁ち切り)を十分に採ってあるので余程の長身でなければ身丈は十分に伸ばすことができる。身長175cmを超えるバレーボール選手のような背の高い人の場合は仕立てられない事もある。この場合は別染等で対応することになるが、これは例外として考える。
次に、仕立て替えで袖丈を変更する場合、変更しようとする袖丈ができるのかどうかも着物を解く前に検証しなければならない。
仕立て替え後の袖丈の寸法が以前のそれよりも短ければ問題はない。言わば、袖丈を縫い詰めるだけなので、袖丈は十分に確保できる。しかし、袖丈を長くしようとする場合、いくつかの問題がある。
まず、袖丈が確保できるかどうかは解いてみれば分かる。1尺4寸の袖丈に仕立てようとする場合、洗い張りした袖の長さが、1尺4寸×2+縫い代があれば仕立て替えができる。しかし、洗い張りをして袖を図ってみたら袖丈の寸法が足りなかったでは仕立て替えはできない。通常、仕立て替えて袖丈を伸ばそうとする場合、袖先にどれだけ余分に縫い込んであるかを触って検証する。
1尺3寸の袖丈を1尺4寸にしようとした場合、1寸3分程度の縫い込みがあれば仕立て替えができる。しかし、怪しい場合は袖先の一部を解いて縫い込みが実際どれだけあるのかを実測してみる。それで仕立て替えをするかどうかを判断することはよくある。
注意しなければならないのは、古い着物の袖丈を伸ばす場合、袖先の折痕が残らないかどうかの判断である。
着古した紬の場合、袖先が擦り切れている場合がある。その場合、十分な縫い込みがあったとしても、袖丈を伸ばせば袖の先に擦り切れた線が入ってしまう。このような場合、前と全く同じ袖丈で仕立て替えようとしても、擦り切れて仕立てられない場合もある。袖先の同じところをもう一度縫うのが難しくなるからである。そんな時には普段着であれば、袖丈を少々短く仕立てることもある。擦り切れを避けて仕立てられるぎりぎりの線で仕立てる。いくらか袖丈が短くなってしまい襦袢の袖丈と合わなくなってしまうが、着られないことはない。