全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅵ-ⅵ 古い着物はどうしたらよいか (着物のメンテナンス) (その4)
襦袢の袖丈は、着物の袖丈よりも短ければ着物の袖の中で泳いでしまい、襦袢の袖が着物から出てしまうことがあるが、襦袢の袖丈が長ければ着物のそでの中で泳ぐことはない。寸法差が1寸あるいは2寸も違えば不都合が生じるが5分程度であれば許容範囲である。
もっともこれは正当な着物の着方ではなく、自分が許容できるかどうかの問題なので、個人の判断に任せたい。このような着方は、普段着を大切に長く着ていた名残と思っていただきたいが、毎日着物を着る人にとってはそういったやり方もあるのである。
紬ではなく染物の場合、今度は擦り切れとともにヤケの問題がある。古い染の着物には少なからずヤケがある。袖を解けば、表に出ていた部分と縫い込まれた部分の色が違っている場合がある。そのまま袖丈を伸ばして仕立てれば、はっきりとした色の境ができてしまう。ヤケは直すこともできるが相応の金がかかる。ヤケがあるかどうかは、あらかじめ袖先を解いて検証する必要がある。
【裄丈直し】
裄丈直しは、私の店のお直しの中でも最も多いお直しである。その原因として、現代の人はたいてい親よりも背が高く親の寸法では裄が短い。また、洋服を着慣れているせいで、より長い裄丈を要求する人が多い。きものとして余りにも長い裄丈を要求された場合は、着物の採寸の仕方を説明して諭す場合もあるが、一般的に昔よりも裄丈を長く仕立てる人が多い。
裄丈直しは、裄を長くする場合と短くする場合があるが、後者はほとんどない。前述の理由でほとんどが裄丈を伸ばすお直しである。
さて、裄丈を直す場合、袖付けを解いて裄丈を伸ばす(又は縮める)ことになるが,縮める場合、問題はない。
問題と言うのは、第一に生地が足りるかどうかである。裄丈は肩幅+袖幅である。反物の幅がそれぞれ肩幅、袖幅になるので、理論的に裄丈は、「反物幅×2-縫い代」だけ採れる。裄丈を縮める場合は、生地を縫い込むだけなので問題はない。
しかし、裄を出す場合は上述の方程式「反物幅×2-縫い代」で足りない場合がある。現在織られている反物は幅が約1尺が基本である。この反物で仕立てる場合、裄は「2尺-縫い代」になる。1尺9寸~1尺9寸5分程度の裄はできる。しかし、昔の反物は反物幅が狭かった。従って、親から譲られた着物は指定の裄丈ができないものもある。戦前戦後におられた古い反物は幅が8寸5分程度のものもある。その反物では、裄丈が所謂並寸(1尺6寸5分)しかできない。古い着物の場合は、反物幅があるかどうかを検証しなければならない。