明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅵ-ⅵ 古い着物はどうしたらよいか (着物のメンテナンス) (その5)

ゆうきくんの言いたい放題

 裄丈直しでもう一つ注意しなければならないのは、折痕とヤケである。これは、袖丈でも触れたけれども、寸法を伸ばすときの問題で、縮める時は問題にはならない。

 袖付けを解いて裄丈を伸ばすと、袖や肩あるいは双方に折痕やヤケの痕が出てしまう。

 折痕は「折消し加工」で解消する。実際に裄丈直しの工賃は、当社で5,000円だけれども、裄を出すための折消し加工に5,000円かかる。裄を縮める場合は5,000円で済むけれども、裄を出す場合は10,000円掛かることになる。
 紬の場合、特に細かい格子柄の場合など折痕が目立たない場合は折消し加工はせずに裄丈直しをする人もいる。昔は、普段着を加工する時には、アイロンを掛けるぐらいで折消し加工などしなかっただろう。

 染物の場合は折消しに加えてヤケの問題がある。紬でもヤケ痕が出てしまうものもあるが、先染めの紬は染物よりも堅牢に染まっているので、それほど目立たない。染物では古ければ少なからずヤケが生じている。色によってヤケ易い色とヤケ難い色がある。余り目立たなければ折消し加工のみで加工する事もあるがヤケがひどい場合はヤケ直しをする必要がある。染物は晴れ着が多いために、紬と違ってヤケの処理には気を遣う。大切な着物、思い入れのある着物であれば、少々加工代はかかるけれどもヤケの完璧に直すことができる。

 先に、「反物幅×2-縫い代」と言う方程式を示したけれども、実は更に裄を出すための裏技もある。1尺幅の反物であれば、ほとんどの女性の裄丈は十分に採れる。しかし、中にはバレーボール選手のような背の高い女性もいるし、体格の良い男性の中には、裄丈が2尺以上必要とする人もいる。関取の着物はもっと裄が長いだろう。
そのような時には、袖付け部分の袖に剥ぎを入れて袖幅を広くして裄丈を確保する。1尺幅の反物で21寸の裄丈にしようとすれば、肩幅95分、袖幅95分に2寸の剥ぎを入れる。
剥ぎを入れるには共の生地が必要である。関取の場合は相当の裄丈が必要(身幅も必要かもしれない)なので、初めから二反で仕立てると言う話も聞いたことがある。しかし、普通の人ではいくら裄丈が長くても、二反は必要ない。生地は、余り布があればそれを使う。古い着物の場合は余り布がないので余っている部分の生地を使う。襟の裏を使ったりもする。特に男性の場合はバチ衿なので、衿を解いて中の生地を欠いて使う。
足りない生地をどこから工面するのか、素人には難しく思われるが、熟練の仕立士は実に巧妙に生地を工面して、そして物の見事に要求された寸法通りに仕立て上げる。私もお客様から与えられた難問に直面した時、仕立士に相談して簡単に解決することも多々ある。
そういう意味でも、日本の着物は仕立て直しをしながら長く着られる工夫がされているのだと思う。
仕立て直しや仕立て替えに困ったときには、呉服屋に相談すれば、思ってもみない解決法が示されるはずである。寸法が違って着られない着物をもらった時には、あきらめず呉服屋に相談してみたらよいと思う。必ず解決されるとは限らないけれども、様々な提案をしてくれるはずである。

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