明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅵ-ⅵ 古い着物はどうしたらよいか (着物のメンテナンス) (その7)

ゆうきくんの言いたい放題

【染替】

 古い着物を持ち込んで染替を頼まれることがある。先日も、お客様の派手になった色無地を地味な色に染替えて仕立て、大変喜ばれた。着物は染替が可能である。

 しかし、何でもかんでも染替えられるわけではない。仕立てられた着物を解いて洗い張りをする。そして、色を抜けば白生地に戻りそれを染めて新しい着物にする、と言うのが染替である。染替という技術の裏には、貴重な絹の生地を大切に使ってきた日本の心があると言ってよい。派手になってしまった着物を地味に染替えて着る。親が着ていた着物を染め変えて娘が着る、と言ったことは洋服では到底まねができない。日本の着物ならではかもしれない。

 私の店ではあらゆる加工の相談にのっているので、様々なケースが持ち込まれる。「色無地の色を替えたい。」は良くある相談で、他には「この小紋を別な柄の小紋に染替えたい。」「この訪問着はもう着ないので、色無地に染替えたい。」「色留袖が派手になったので地色を地味にしたい。」等等。

 いずれも、着物を大切に着たいという気持ちからの要求で、着物は染替えられると親や誰かから聞かされてきたのだろうと思う。しかし、今そういった要求には応えられなくなってきている。

 一つの理由には、元々できない物もある。例えば、黒留袖を薄い紫の色無地に変えるというのは初めから困難である。黒留袖の黒の地色を白生地に戻すことは困難である。もしも、それができたとしても、裾の柄の色を抜いて薄い紫に染めるのも困難が伴う。裾柄を抜いてほぼ白生地に戻すことができたとしても、薄い色に染めた場合、裾柄が炙り出しのように浮き出てしまう。また、特殊な染料を使った場合色が抜けないこともある。

 そのような場合、昔の人はどうしたのだろう。留袖に限らず、小紋を染め変えた場合、元の柄が浮き出てくる可能性は十分にある。それでも昔は小紋を別な小紋に染替えることをやっていた。

 昔(30年位前)は、染替えの需要も今よりはたくさんあったし、染替える職人もたくさんいた。その当時染替用のカタログがあったのを覚えている。着物を持ち込めば指定の柄に染替えてくれる。しかし、掲載されている柄の多くは、色の濃いものか更紗のような多色の入り混じった柄だった。色の薄い小紋の柄もあったけれども、それらは白生地から染める柄、と制限があった。

 柄物のきものを柄物の着物に染替える場合は、前の柄が浮き出ても目立たないような柄に染替えるといったルールがあった。そういったルールを無視して染替はできないのである。

着物のことならなんでもお問い合わせください。

line

TEL.023-623-0466

営業時間/10:00~19:00 定休日/第2、第4木曜日

メールでのお問い合わせはこちら