全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-28 これから着物とどう付き合うべきか(その4)
一つは安価な価格で着物が販売されている。これは悪い行為ではない。着物を着たい人が、着物を安く購入する事ができるので、着物を普及させるのによい事かもしれない。ただし、業者によっては、その成因をつまびらかにせず、高価な着物を安く売っているかの様に消費者にアピールしているところもある。
もう一つは、安い着物であるにも関わらず、さも高級品の様に見せかけて、とてつもない利益を得ようとする行為である。型物の訪問着を作家の作品と偽る。プリントの江戸小紋を型染の江戸小紋と偽って販売する。この場合、プリントにはない耳をわざわざ型染であるかのように染めているものもある。
どちらも呉服業界の販売不振を量的に利益の上で確保しようとする行為だけれども、業界として最も大切なことが抜けている。
それは、昔から培ってきた本当の染や織の技術がないがしろにされていることである。安く生産された物で売上や利益を確保しようとしているが、本当の技術を持った染屋織屋、そしてそれを支える職人たちは幕の外に置かれている。
呉服の未来を本当に考えるならば、それらの技術の継承を第一に考えなければならない。大量販売、大量消費は需要の減少する今の呉服業界にはなじまない。ここで考えなければならないのは、呉服業界が小さく成ろうとも、健全な形で次世代に伝える事である。ではどうしたら良いのだろうか。
着物は昔から世代を超えて大切にされてきた。リサイクルやオークション等と言う言葉が飛び交う現代の遥か昔から着物はリサイクルが行われてきた。
着物の構造を見れば分かる事だけれども、自分の着物を自分よりも背の高い人が着られる様に、身丈は「内揚」をして仕立て替えできるようにいる。背の高い子や孫にも仕立て替えられる工夫である。
八掛は表生地よりもせり出している。八掛の色を見せる、と言う意味もあるけれども、裾が擦れた時、八掛が擦り切れるように出来ている。表生地が擦り切れない為の工夫である。八掛は擦り切れても、仕立て替えの時にずらせば同じように仕立てられる。裾が破れても、ぼかしの八掛でも三回は仕立替えが可能である。
着物には他にもリサイクルに耐える工夫がなされている。とは言え、着物をリサイクルするのはそれ程簡単ではない。袷の着物を仕立て替える場合、洗い張りをして仕立てる事になるので5~6万円かかる。洋服の感覚から言えば高価かもしれない。
3000円の浴衣を仕立て替えする人はいないだろう。安い着物であれば、新しく買った方が良いと思う人もいるだろう。しかし、昔はそれ程手間やお金をかけてもリサイクル(仕立て替え)する意味があったのである。
昔は、洗い張りや仕立てを自分でやる人もいた、と言う事情もあるが、着物はリサイクルする価値が十分にあったと言える。
つづく