全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
ⅴ-ⅲ 良いきものの証(その11)
博多帯の証紙については、「きものフォトトピックス11.博多織工業組合証紙」と「同12.博多織工業組合証紙改定」で詳しく書いたが、現在の証紙は以前の証紙ほど商品を差別化できなくなってしまった。
博多織工業組合は西陣織工業組合と並ぶ老舗的な組合だけれども、なぜこのように改定してしまったのか、私は疑問に思っている。
西陣の証紙、博多織の証紙、どちらも時代とともにその意味するところが微妙に、あるいは大きく変わっている。とはいえ二つの証紙共はっきりとした基準を提示し組織もしっかりしている。
しかし、証紙の中には基準がはっきりしないものもある。
西陣の帯に添付してある「手織りの証」という証紙は私の知る限り三種類ある。おそらく、それぞれ主催している組織では、その判定基準があるのだろうけれども、そもそも何故三種類あるのかがわからない。
「手織り」とは手で織ったもの、すなわち機械で織ったものではないという意味なのだろうけれども、どこまで手を掛けたものを「手織り」と言うのか。中国や諸外国で織られたものでも手で織ったものであれば「手織りの証」が添付されるのか。基準ははっきりとしているのかもしれないが、同じような証紙がいくつも乱立していれば、どれが何を保証するものかわからなくなってしまう。
こり「手織りの証」をはじめ証紙の中には、なし崩し的になくなったものもある。いつの間にか証紙がなくなってしまうのは、それを発行する基盤が脆弱であることを意味している。証紙は信用の証である。その発行する基盤が信用できるところでなければ証紙の信用も崩れかねない。
「手織りの証」は「手織り」と言うたいへん素人受けする文言を関しているだけに消費者は誤解なく理解する必要がある。インターネットの帯を販売するサイトでは、「手織りの証付」と強調しているものもある。
どんな証紙であれ、証紙が貼ってあれば金科玉条を意味するわけではない。消費者がし宇品を選ぶ際には、証紙の本当の意味を理解した上で、購入の参考としなければならない。
もしも、販売員が証紙をたてに売り込んできたならば、証紙の意味するところを詳しく説明してもらえばよい。そとて、納得して商品を購入することである。