全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
ⅴ-ⅲ 良いきものの証(その13)
紛らわしいラベルと言えば、紬全体に言える。
全国に名が知られた紬はたくさんある。多くはその産地名を冠している。結城紬、大島紬、塩沢紬、琉球絣、久米島紬等々。紬は元々全国どこででも織られていたのだろう。主婦が自家用としてその地域地域で手に入る糸を使い生地を織り使用していただろう。それが次第に淘汰されて残ったものが今日まで織り続けられている紬である。織り続けられ全国に名を馳せるには良い品であると同時に特徴のある紬である。結城紬、大島紬、塩沢紬などそれぞれ特徴を持った紬である。
少なくなったとは言え、今でも紬はそちらこちらで織られている。今はほとんど見かけなくなってしまったが、三十年くらい前までは西陣でも紬は織られていた。他に紬の産地と言えば、十日町を中心とした新潟、山形の米沢ではまだ相当数の紬が織られている。その他の地域の紬も含めてラベルには、「結城紬」「大島紬」の名を冠しているものがある。
正確に言えば「〇〇結城」「〇〇大島」と言ったように枕詞があり、本場結城紬や本場大島紬とは全く違うラベルが貼ってある。
結城や大島の名を冠しているとはいえ、メーカーでは消費者をだまそうという悪意はないのは明らかである。似たようなラベルを使うのであれば悪意も読み取れるけれども、全く違ったラベルを使い、意図するのは「結城紬風の」「大島紬と似た組織の」という意味で商品に名前を拝借しているのである。
我々業界の人間が「〇〇結城」「〇〇大島」というラベルを見ると、「ははぁ、なるほど。」と、その意味を良く理解するのだけれども、消費者の中には勘違いする人も多い。
店頭に「越後結城」を飾っておくと、「結城紬ですね。」と感心して見ていくお客様もいる。本場結城紬と勘違いしているようなので、「これは新潟で織られた・・・・。」と説明し、値札を見せると、「そんなに安いのですか。」と驚いている。越後結城は本場結城と違い、縦横に手紬糸を使っているわけではないので価格は相当に違う。
ラベルは本場結城とは全く違うし価格も全然違う。お客様に丁寧に説明すれば良くわかっていただけるのだが、何の悪意もないラベルが消費者の判断を誤らせないのかと心配にもなる。まして悪意を持って説明された場合、消費者にとってとんでもないことになる。
ラベルは証紙とは違うけれども、メーカー、販売業者共に消費者に対しては細心の注意が必要である。それと共に、消費者はラベルや証紙の意味を短絡的に理解せずにその意味するところを良く理解する事が必要である。
もっとも、責任は消費者ではなく販売業者にあることは論を待たないけれども。