全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
ⅴ-ⅲ 良いきものの証(その7)
第一の条件は、まともな呉服屋での話である。今白生地は二束三文とも言えるような安い海外の製品から前述の純国産の白生地まである。その差は一反で10万円を下らないだろう。まともな呉服屋であれば、染めを施された安い生地の商品は安く買い付け、高い白生地は高く仕入れる。そして、消費者へは安いものは安く、高い物は高く提供せざるを得ない。
しかし、安く仕入れた(安い生地)商品を国産白生地と同じように販売する業者も後を絶たない。まともな呉服屋であれば白生地の価格は上代に正確に反映されている。従ってそのきものの白生地はその価格並みと思って差し支えない。
第二の条件として、同じレベルの商品を比べる場合に限られる。
きものは白生地に染を施されたり刺繍をしたり、箔を置いたりして加工される。その付加価値は生地代に比べて圧倒的に高い。
同じ白生地を使っても、色無地に染められた反物と伝統工芸作家が付加価値を付けたものでは価格が天と地程に差がある。10万円の白生地と100万円の友禅訪問着ではどちらの白生地が高いか分からない。
しかし、加賀友禅の訪問着を選ぶとしよう。加賀友禅だけではなく同じような格の京友禅訪問着も一緒に比べて選ぼうとした場合、白生地はどれほど問題にする価値があるだろうか。80万円の加賀友禅、100万円の京友禅その他その程度の訪問着を比べた時、それらに使われている白生地はどういうものだろうか。
それらの白生地は実際に価格に差はある。しかし、その差はそう大きなものではない。せいぜい1~2万円程度ではなかろうか。訪問着の上代価格に比べれば微々たるものである。
それらの訪問着に使う白生地は、作家や染屋が選ぶが、その基準は「糸目糊がのりやすい」とか「染料が挿しやすい」「光沢がありフォーマル感がある」などだろう。良い作品を創る為にそれに適した生地を選ぶのであって、価格で選んではいない。そしてその選ばれる白生地はそれにふさわしい物である。
100万円の友禅訪問着を創るのに、ぺらぺらの安い白生地を使うはずはない。詮索するまでもなく、まちがいなくそれに相応しい白生地を使っているのである。従ってこのような場合、どちらの白生地が良いのかは問題にする必要はない。
江戸小紋や緻密な友禅の場合、シボの高い縮緬地は柄を置きにくく、シボの低いさらさらした生地が使われる。こう言った生地は、シボの高い鬼縮緬と比べると薄く感じられあたかも安い生地に思えてしまうが、一流の染師の江戸小紋は決して安い生地を使ったりはしない。
色無地は最も白生地代が上代に反映されるきものである。無地染の染価が同じであれば上代は白生地によって左右される。色無地の場合、価格に拠って白生地の良し悪しが分かるともいえる。ただし、これもまともな呉服屋での話である。