明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

ⅴ-ⅲ 良いきものの証(その8)

ゆうきくんの言いたい放題

⑥ レア物

「レア物」と言う言葉は横文字できものには似つかわしくない。しかし、以前バスケットシューズや時計など「レア物」として高値で売買されたことがあった。

その当時、野口汎先生の長板中形小紋が深夜放送で紹介され、若い人が問屋に殺到してたちまち商品がなくなったことがあった。普段きものなど着ない若者から「どんな柄でも良いから一反・・・」と言う注文も舞い込んだという。マスコミの力も去ることながら、「レア物」という付加価値は如何に購買意欲を刺激するかを如実に表している。

「レア物」はきものの世界では「あまりありません」「中々手に入りません」と言う売り口上で表現される。その理由は、原料が希少であったり、創る人が少なかったり、また過去の作家の作品で今は出回っていないなど様々である。

希少なきもの(レア物)を勧められれば誰しも触手が動いてしまう。誰も持っていない物を着たい身に着けたいと言うのは人の本心だろう。では、きものの場合、この希少なきもの(レア物)をどのように解釈し購買の判断材料にしたらよいのか、考えてみたい。

まず、材料の希少性についてはどうだろう。

材料の希少性を語る際、一次産品と二次産品に分けられる。一次産品とは原料そのものが希少であるもの。例えば黄金繭とか貝紫など、原料が少ないか採取しにくい物である。二次産品では、越後上布や品布のように原料はあってもそれを糸にするのが難しい、または糸を作る人がいないといった商品である。

確かに昔からある製品については、希少品としての評価に値するものは多い。紫根や茜はもう国産のものはほとんどないという。今、紫根は中国、茜はインドから輸入されている。日本紫根、日本茜で染めたきものは希少品として扱われるだろう。結城紬や越後上布は糸を紡ぐ人、績む人がいなくなりより希少なものとなっている。

しかし、新しい商品には果たして希少性の判断が難しい物もある。

きものに限らず、新しい素材や商品はもてはやされる。戦後、ナイロンが発明され市場に出回った時にはナイロンの洋服が高価なものとされ珍重された。今にすれば、静電気が起き通風性に欠けるナイロンの洋服など着れたものではないが、当時はあこがれの商品だった。十数年前にはテンセルというセルロース系繊維が話題になった。当時だいぶもてはやされ高価だったが、現在余り聞かなくなった。

電気精錬の技術がなかったナポレオンの時代、アルミニウムは金と同じように珍重され、貴族はアルミの食器を自慢していたという。

新しく世に出た製品は注目されもてはやされる。中には後世までその価値が認められ続けるものもあるが、時代とともに消える物もある。それは、その商品の価値が本物であるかどうかにある。それらは決してまがい物ではないが、本当の価値以上にもてはやされれば、いずれ淘汰されて適正な価値(価格)に落ち着いてゆくのである。

「このきものはあまりありません」「このきものは中々手に入りません」の言葉の裏にも同じようなことが隠されている。

つづく

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