全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
ⅴ-ⅲ 良いきものの証(その9)
きものの中には、昔から織り続けられ、染め続けられたけれども最近姿を消しつつあるものは多い。作る人(織る人、染める人)がいなくなったせいもあるが、需要がなくなって姿を消すものもある。ネルやセル、メリンスなどがその例である。全く無くなったわけではないが手に入りにくくなった。
作る人がいなくなり商品が少なくなった商品は、価格が高騰し珍重されている。需要がなくなったものについては「レア物」扱いはされない。在庫があってもお呼びが掛からずにそっと棚に眠っている。
前者は「このきものはあまりありません」「このきものは中々手に入りません」の売り口上の対象になるが、後者は黙って棚の隅にしまわれている。
私は、どちらも日本のきものとして残してもらいたいと思うのだけれども、現実には価格が高騰し庶民には手の届かなくなるか、もしくは誰も着る人がなく姿を消してゆく運命にあるのは致し方ないのかもしれない。
さて、きものの売り場で「レア物」扱いされるものの中には、上記の商品とは全く違ったものがある。昔からあるきものではないが、「レア物」として売り場に並べられるものである。新しい素材や新しい織り方染め方、また新進の作家の作品などである。それらは、前述したナイロンやアルミニウムなどと同じように価値の判断が難しい。
更に、売り口上で「レア物」とされる物には偽物もあることを覚えておかなくてはならない。偽物というのは、まがい物ということではなく、販売員の説明に嘘偽りがある場合もある。
消費者は希少価値に弱い。それに付け込んで、「レア物」を創作したり、「レア物」でもないものを言葉巧みに希少性を売り込むことは、販売側にとっては大きな力となる。
話は複雑になってしまったが、消費者が商品の希少性をどのように捉えたらよいのだろうか。希少品には様々な意味がある。本当に希少な商品。販売戦略上希少品として売っているもの。時には希少品でないものを希少品として売っている場合もある。
消費者が、希少品と説明されただけで触手を伸ばしてしまうのは早計である。その商品の希少性をよく理解することが大切である。そして、希少性を理解したとしても、そのきものが自分にとって本当に必要なものなのかをよく考えなければならない。