明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ.きものつれづれ 44.呉服マクロ経済学(その5)

ゆうきくんの言いたい放題

 市場が大きければ、規模の縮小は淘汰の範囲内で収束する。規模が小さくなったとはいえ、業界の健全性は保たれる。しかし、極端に小さく萎んだ呉服業界では、それ以上の規模縮小が起こった場合、きもの(きもの文化)を構成する要素が一つ、また一つと脱落して行く。

 それは、もう十年も前からその兆候が見え始めていた。
「色物羽二重は、別染しかやりませんので疋単位になります。」
従来雨コートの裏地に使っていた色物羽二重が入らなくなる事を意味している。

 半衿を扱っている問屋が、
「麻の半襟は、入らないのでやめました。」
他の仕入れ先を何とか探して事なきを得たが、麻襦袢の半襟が無くなってしまうところだった。今でも仕入れし難いけれど。

「メリンスの襦袢は、もうこれだけです。」
そういって見せてくれたカタログの八割は×(廃版)が付けてあった。
男物の羽二重地が無くなってしまう事は、「きもの春秋終論 Ⅳ-37.またまた呉服業界の危機」で書いた通りである。

 呉服業界は、これ以上縮小すれば、空中分解する危機をはらんでいる。今3,000億円弱と言われる業界規模が2,000億円、1,000億円と縮小すれば業界は成り立たない。成り立つとしたならば、これまでのような呉服環境とはまるで違ったものになるだろう。

 着物の種類は極限られ、誂えなどはなく全てプレタの着物になるかもしれない。多くの選択肢を求める消費者の要望には応えられず、仕立替えもできなくなるかもしれない。これまでの着物の環境とは違い、極限られた人の極限られた着物だけになってしまう。

 私の店では、幸い未だ昔ながらに呉服の商いを続けている。お客様の要望も事細かに聞いて商いをしている。しかし、業界が縮小してしまえばそれも続けられなくなり、好むと好まざるとにかかわらず商いの幅は縮小して行く。

 呉服業界を俯瞰して見れば、
「他の呉服屋が店を閉めても、うちは大丈夫。」
とか、
「呉服屋が減れば、うちの店はその分客が増えだろう。」
などとは行っていられない。

 かつては、呉服屋が一軒や二軒、いや数十軒店を閉めようとも、着物文化に係りはなかった。しかし、現在呉服屋の倒産は一歩一歩着物文化を崩壊に導いていることを意味している。

 私は、ナショナルチェーンをはじめとして大手の呉服屋には違和感、と言うよりも嫌悪感を持っていた。その販売方法や商品、価格など、その思いは今も変わらないが、さて大手の呉服屋が無くなれば、業界の川上は乾いてしまって私達川下に水(商品)が流れてこなくなるとすると・・・。

 どうすればよいのか、私には分からない。このジレンマは、私の背中に重くのしかかってきている。

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