全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-46 呉服屋コロナ騒動「日本経済はかくも脆弱か?」その3
まず、最初の問題は生産体制である。現状では、1日に10枚程度。2~3日に一度2~30枚納品される。しばらくすると販売に拍車がかかり、一人で5~6枚買って行かれる方もいる。そして、「このサイズであの柄が欲しい」と注文する方も多くいらっしゃった。とても生産が間に合わない。
そこで最初にお願いしたのが、引退した和裁の仕立士である。技術は十分である。「結城屋のマスク」として販売して余りある。なんとかお願いして縫製してもらう事になった。しかし、引退して高齢のこともあり、やはり一日7~8枚が限度。山形市内ではなく遠隔地に住まいしており、数日に一度完成品を取りに行く。
まだまだ生産量が足りないので、縫製経験のある人を探し回った。その結果、以前縫製工場で働いていた方、そして取引先のメーカーを通じて経験のある方を紹介した貰った。これで商品供給のサプライチェーンはできたけれども、それでもまだ生産が追い付かない。
そこで縫製士には、縫製に専念してもらい、裁断は私がすることにした。私が型紙で裁断した材料を持ち込み縫製してもらう。完成品を持ち帰り、紐を通して袋詰めすると言う工程が出来上がった。
一度に持ち込む材料は30~50枚。裏地を合わせると60~100枚裁断しなければならない。朝は5時半から、夜は10時半まで裁断して、次の日に納品回収に行く。そんな日が続いた。もちろん昼間は、お客さんの数が少ないとはいえ店にいなくてはならない。
さて、何とか軌道に乗ったものの、その間様々な問題にぶち当たった。
最初は、「マスク用の紐」が手に入らない。マスクの紐など何時でも手に入ると思っていた。しかし、手芸屋さんにいっても「マスクの紐はありません」ばかりだった。
「〇月〇日に入荷します。」と言う情報を掴んで、朝早く開店前の手芸屋さんに行って並んだ。しかし、「5mの紐を一人2本まで」の制限があった。女房と2人で言って並んだ。その次の時には知人を連れて一緒に並んでもらったりもした。
しかし、それだけでは到底足りない。インターネットで注文したが、納品は数週間先だった。他のページも探しまくって、何とか入手する事ができた。しかし私には、
「なんでマスクの紐が手に入らないのか。需要が増えているのは分かるが、それだけ生産できないのか。」
と言う思いがあった。
さて、次は思わぬものが手に入らなかった。
「製品として売るには、パッケージを吟味した方が良いですよ。」
と言うアドバイスに従って、ビニールの袋を購入した。試しに一袋100枚を購入してみたが、やはりパッケージによって製品の印象が違う。
「これで行こう」そう思って、追加500枚を注文した。しかし、今度は品切れだと言う。取り寄せてもらおうとしたが、「メーカーにもないので納品は先になります。」と言う返事だった。
とりあえず代わりの袋、(形、幅は同じで長さが長い)を買って入荷するまでしのいだ。
「なんでビニールの袋が手に入らないの?」そう言う思いだったが、店の人の話では、
「全国でマスクを入れる為に注文が殺到しています。」
そのメーカーは、大きさや形などを変え、おそらく数百種類、あるいはもっと多くのビニール袋を生産している。それだけに、そのような大きなメーカーがたった一枚のビニール袋の在庫が底をつくといったことがあるのだろうか、と思った。
しかし、品薄は、それだけに留まらなかった。
つづく