明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-46 呉服屋コロナ騒動「日本経済はかくも脆弱か?」その4

ゆうきくんの言いたい放題

 順調にマスクが出来上がり、当初生産が追い付かずにお客様にご迷惑をお掛けしたが、何とか販売に見合うマスクを作る事ができた。すると、縫製士から次のような話が有った。

「結城屋さんで糸は入りませんか。近くの手芸屋さんでは糸が手に入らないんです。」

 糸、とはミシン用の糸である。50番手綿の白糸という指定なのだが、実は私は糸については余り詳しくない。「糸などどこでも手に入るだろう」と言う気持ちで近くの手芸屋さんに行ったがやはり品薄である。

 幸い二つあったのでそれを確保したが、次はいつ入るのかと聞くと、分からないと言う。

そして、「これではだめですか」と他の糸を見せてくれるけれども、私は詳しく分からないので返答のしようがない。縫製士に指定されたのは「50番手の綿の白糸」である。ポリエステルの糸は有るらしいが、果たしてそれでいいのか分からない。

 とりあえず二つ買って縫製士に渡した。「これで、しばらくは間に合います」との事だったが、今度は他の縫製士からも同じような相談があった。本当に白糸は手に入らないらしい。

 糸がなければ縫製はできない。従ってマスクはできない。コロナのお陰で何も売れない中で、何とかマスクを売ってしのいでいる当社にとっては死活問題、いや既に死活問題なのだけれども、死活問題にとどめを刺されてしまう。

 インターネットで探しても、やはり見つからない。取引先に聞いたけれども「糸」と言うのは私の属する「いとへん」業界ではあるけれども、全くの範疇違いでツテは見つからない。

 私の兄が繊維商社に勤めていたことから、何とかツテはないかと探してもらったが、やはり手に入らない。大手で使うのはポリエステル糸なので綿糸はないと言う。更に、工場で使うミシンは工業用ミシンで糸巻きのボビンが巨大で家庭用には合わないと言う。

 結局、私の家に有った使いさしの糸や、手芸屋で手に入れた大きなボビンの糸を巻きなおしたりして何とか対応した。

 やはり専門ではない分野で商売をしようとすると、分からない事が沢山有るものだと感じさせられた。

 「マスクの紐」「ビニール袋」「ミシン糸」いずれも私にとっては、
「どうしてそんな物が手に入らないの。」

と思えるものだった。しかし、更にこんな話も聞こえてきた。

 ある藍染作家さんが藍染のマスクを持ち込んできた。少々高価だけれども売れていた。その作家さんが言うには「ミシンの針が手に入らない」と言うのである。

 その作家さんが創るマスクはプリーツマスクである。両側にミシンを掛けると、ギャザーの上でミシンの針に負荷がかかり、針が折れやすいと言う。私は良く分からないが、ミシン針も様々あるらしく、それに適した針が品薄で手に入らないらしい。

 「マスクの紐」「ビニール袋」「ミシン糸」に加えて「ミシン針」、それらが手に入らない事があろうとは思ってもみなかった。

つづく

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