全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-46 呉服屋コロナ騒動「日本経済はかくも脆弱か?」その7
考えて見れば、今回のコロナ騒動で混乱した経済は、取り立てて「日本経済の脆弱性」とは決めつけられないようだ。
より豊かな生活を求めて積み上げてきた経済が次第に複雑になり、その脆弱性が一気に噴き出したような気がする。
巷に並ぶ商品は、多種多様を極め、消費者の好みに合わせて更に進化して行く。そして、それを創る為に生産工程は複雑化し、材料の調達も多岐にわたっている。生産や材料の調達先は国境を越え、世界中に広がっている。
身近な商品を見ても、原材料の思わぬ原産地、思わぬ生産地が表示されている。地球の反対側で生産された材料で隣の国が生産し日本で袋詰めしている例も少なくない。
それは、決して悪い事ではないが、このようなグローバル化した経済がこの度のような騒動で一気にその脆弱性を露呈している。
「トランプタワー」と言うゲーム(遊び)がある。「トランプタワー」と言うのは、かのアメリカ合衆国第45代大統領ドナルドトランプがニューヨークマンハッタンに建てた金ぴかのビルディングではなくて、カードのトランプを三角形に何弾も積み上げるゲームである。
慎重に5段も6段も積み上げるのは至難の業だけれども、100段以上の記録もあると言う。造った人はさぞご満悦だろうけれども、出来上がったトランプタワーの1枚でも抜かれれば、たちまちにタワーは崩壊してしまう。
私は、つい現在の経済状況とトランプタワーを重ね合わせてしまった。日本の経済は何段にも積み上げられたトランプタワーの様に素晴らしい体裁を整えてはいるが、ちょっとした思わぬ横波を受ければたちまちに崩れてしまう。
国際的なサプライチェーンが1カ所でも断ち切られると大きな影響がある。突然の事態に特定の商品の急拡大した需要(マスクの需要は半年前の何倍、いや何十倍、何百倍になったのだろう)は、市場を混乱に陥れる。
さて、振り返って呉服業界を見ると、同じような事が言える。
かつては「輸出羽二重」と言う言葉通り、絹の生産は日本のお家芸だったが、現在絹糸のほとんどは海外からの輸入品である。大手呉服屋の多くが仕立てを海外に頼っていると言う。
日本をターゲットに生産してきた中国の絹糸は、需要の変化を捉えて国内やヨーロッパへとその売り先を変えている。
先細りする呉服業界ではあるが、小さいながらトランプタワーは確実に積み上げられ、その崩壊の危機も併せて積み上げられている様に思う。