全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-47 本当の普段着(その4)
子供が浴衣に締める浴衣帯を「三尺帯」と称する事があります。(地方により呉服屋により異なるかもしれません。)この「三尺帯」の名称の由来は、「概ね長さが三尺」と言うところから来ています。素材はと言うと、メリンスや綿の生地を切って折りたたんで締めたようです。子供が締める帯は、当時既製品化などされていませんでした。
普段着に締める帯は、その本来の目的に合わせて作られていたものだったでしょう。
今日、帯と言えば呉服屋さんで売っているものです。袋帯や名古屋帯、染帯、半巾帯、兵児帯など、呉服屋の店頭に並んでいます。
着物に合わせる帯は事細かに決まっており(通説ではそう流布されています。)
「この着物に合わせる帯を・・・」
と着物を呉服屋に持ち込めば、即座にその着物に合わせられる(と思われる)帯を出してくれる。少なくても今呉服屋の店頭に並んでいる着物であれば、それに合わせる帯は直ぐに目の前に現れる。逆に帯を持ち込んで、
「この帯にはどんな着物が・・・」
と言えば、即座にその帯を合わせられる着物が目の前に現れる。合わせる着物や帯がなければ、呉服屋に飛び込んでお金を出せば困ることはないように思われる。
さて、今回お客様に相談されたのは、普段着に合わせる帯である。着物は麻生地の古着を仕立て替える。そして、着るのは買い物など極普段の場で着るので、それに合わせる帯は、と相談された。電話での相談である。
麻生地の着物と言えば、上布(越後上布、能登上布、宮古上布等)、小千谷縮が頭に浮かぶ。しかし、上布は今は大変高価である。結城紬と同じように「いくら高価でも普段着」である。普段着には間違いないけれども、お太鼓の帯を締め、買い物に着て行く人は極少ないだろう。
小千谷縮であれば、真夏の街着にするか、浴衣として着るかである。街着であれば、上布と同じように八寸などのお太鼓を締めの場合が多い。浴衣として着るのであれば、博多の紋織半巾帯や紗献上半巾帯が頭に浮かぶ。
しかし、麻の着物を着てスーパーに買い物に行く姿を想像すると、そのどちらでもないように思える。
お太鼓を締めてスーパーに買い物に行く・・・今はそういう人もいるだろうけれども、着物が普段着であった時代には、そうではなかったように思える。
半巾帯を締めてスーパーへ・・・それはあるかもしれない。しかし、今私の店にある浴衣用の半巾帯と言えば、博多の紋織、紗献上、ミンサーなどである。強いて進めればそれらの帯になるけれども、昔はそのような普段着に皆が皆博多の帯を締めたのだろうか、と言う疑問が湧いてくる。
縄の帯と言う事はないだろうけれども、正絹の博多帯よりはもっと普段の帯を締めていたのではないだろうか。
つづく