明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-48 コロナ禍の影響(その2)

ゆうきくんの言いたい放題

 そんな矢先である。問屋から連絡があった。
「絽の裏襟を作っているメーカーがやめるって言うんです。うちではもう絽の裏襟は扱えなくなります。今でしたらまだ在庫がありますので供給できますがいかがしましょう。」

 絽の裏襟は夏物の着物の仕立てには必需品である。バチ衿でなければ一着に一枚必要である。昔は夏物も数が売れていたので裏襟はロールで購入していた。一反分の裏襟を裁って使用する。さすがに一シーズンで一反分は使わなかったが、毎年のように買っていた。

 しかし、近年夏物も数が出なくなったために、一枚ずつ裁ってビニール袋に入っている製品を一度に五枚から十枚位購入していた。私の店ではそれで困ることはなかったが、メーカーにしてみれば数的に激減である。
 この度メーカーが廃業するのは、必ずしもコロナのせいではないかもしれない。しかし、少なからず影響があった事は確かである。

 裏襟のメーカーと言うのは、西陣の帯の織屋や染物屋のような華やかさはない。極地味なメーカーである。と言っても、着物を仕立てるのに裏襟は必需品である。そう言った余り目立たない、外の目には触れないが大切なメーカーをコロナは直撃する。

 裏襟のメーカーは一つの例に過ぎないが、呉服業界に限らず小さいながらその業界にとっては無くてはならない大事な業者は大きな打撃を受けているだろう。ほんの些細な部品を造る零細なメーカーは、どんなに大切な部品を造ろうとも、その規模故に大きな影響は免れない。

 とりわけ伝統産業に限って言えば、多くが零細な事業所が多いだろう。伝統産業の多くは、生活必需品とは離れたものが多く真っ先に影響を受けているだろう。

 かく言う私の店も大きな影響を受けている。コロナ禍の中できものを作ろうと言う人は影を潜めている。きものが売れなければ私の店は冬眠状態となり、問屋からの仕入れもストップしている。

 最近、京都や東京から顔を出してくれる問屋さんもあるけれども、
「いや~、今の時期は・・・。」
と言って帰ってもらっている。

 コロナが明けて、元の状態に戻るのが何時かは分からない。しかし、戻ったとしても、東京の日本橋や京都の室町に行った時、どのような状況になっているのだろう。

 今は問屋さんの姿は見えるが、その先のメーカーの姿が全く見えない。裏襟のメーカーの様に廃業しているメーカーも多数あるだろう。伝統産業だけに、一度なくなれば二度と起こせない仕事も多い。  コロナ禍の影響がどれほどのものなのか、開けてみなければ分からない。その時が恐ろしく思えるのである。                            

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