全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-50 着物の処分・箪笥の整理(その3)
着物を着る身内の人がいて、その人が着たい着物を選び寸法を測る。そして、それらの内仕立替え可能な着物がまな板に載せられる。しかし、それらの着物が全て仕立て替えて着られるとは限らない。一つ一つ検証する必要がある。
まず、その着物がどの程度の物かである。昔のすばらしい友禅を施した着物になると、私も「是非とって置かれたら良いですよ」と言いたくなる。しかし、中には「仕立て替えられるまでもないんじゃないですか」と言う物もある。と言うのは、絹物の袷の場合、解いて洗い張りをして仕立て替える。昔の着物は胴裏が変色している場合もあるので胴裏も交換しなければならない。新品であろうと仕立て替えであろうと仕立代は同じである。そうすると仕立て替えるのに加工代が結構掛かってしまう。
高価な着物であれば仕立代も惜しくはないが、安い紬や小紋になると簡単にはお勧めできない。尤もそれは、その着物を着たいと言う人の選択なので、どんな着物でも着たいと思えば仕立て替えすることに私は反対はしない。ただ、加工代がどれだけ掛かるのかを説明する事にしている。そして、どうしてもその着物を着たいと迷うのであれば、出来得る別の方法も提示するようにしている。
例えば、身丈は1寸短いが、裄は1寸5分短いと言う場合、「身丈はちょっと短いけれども我慢してください。裄だけ直すのでしたら加工代はそう掛かりませんから。」と言うアドバイスもできる。小紋袷の場合、洗い張りと仕立替えだけで5万円位掛かってしまう。しかし、裄を出すだけならば1万円程度でできる。
単衣の着物の身幅が前幅後幅共に広すぎると言った場合、着物を解かずに脇縫いを前後同じだけ幅を詰める、と言った手もある。
古い着物を加工する場合、やはりその加工代がいくらかかるかは気になるところである。しかし、着物はこのように比較的鷹揚である。着物のことを良く知る呉服屋さんに相談すれば、余り加工代を掛けずに加工する方法を教えてくれる。
安い着物の仕立て替えはお勧めしないと言ってしまったが、呉服屋はいろんな魔法を心得ている。それはケースバイケースでしかないので、紙面で伝授はできないけれども意外と簡単に解決できる場合もある。そのことも頭に入れで箪笥の整理を考えてはどうだろうか。
さて、タンスの中から身内が着てくれそうな着物を抜き出してみたが、他にもまだ沢山の着物がある。年齢が合わない、着る機会か無さそうな着物、男物等。次にそれらの処分方法を考えるのだけれども、ここからは、『身内に着物を着る人がいない場合』と同じである。従って次回『身内に着物を着る人がいない場合』として説明する。
つづく