全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-50 着物の処分・箪笥の整理(その4)
『身内に着物を着る人がいない場合』
自分は着物を着ないし、差し当たって身内に着物を着る人もいない、と言うケースは多いが、先に書いた通り、それでも着物を捨てるのを躊躇している人が多い。
「親が着ていた着物」「高価かもしれない着物」「周りに誰も着物を捨てる人がいない」など、要するに「何となく着物は捨てられない」と言う思いがあるようだ。
身内に着物を着る人がいない場合、私が箪笥を開いてまず注目するのは、着物の種類である。種類と言うよりも格と言った方が良いかもしれない。
昔は着物を良く着たので、普段着が残っている場合が多い。普段着と言うのは、綿やウールの類である。これらは、採って置いてもまず着る事はない。余程着物の好きな人がいれば別だけれども、身内に着物を着る人がいないのであれば採って置いてもしょうがない。加工しようにも着物の価値に比べて加工代が掛かりすぎる。
綿やウールは古着屋で高価で引き取ってくれるケースはまずない。綿の中には、薩摩絣など極一部価値のある物があるけれども、それ以外は寸法など測るまでもなく廃棄を薦めている。
さて、それ以外の着物について、「着る人がいないのでしたら、全て廃棄したらよいでしょう。」とは中々言えないし言う気もない。呉服屋としては、まずどんな着物があるか興味があり、一枚一枚開いて行く。中には珍しい着物もあるからである。
➀振袖
娘さんがいらっしゃる家では大体振袖がしまってある。お嫁に行ったとしても自分が着た振袖を持って行くことは余りしない。実家の箪笥に眠っている場合が多い。
先に想定した家庭に当てはめてみると、嫁に行った娘の振袖を母親が一人で守っている。母親にしてみれば、娘が二十歳の時に仕立てた振袖である。また娘にしてみれば、成人式で着た思い出深い振袖である。どちらにしても捨てるには忍びない。
娘さんに女の子がいる場合は、「着るにしても着ないにしても娘さんの為にとって置かれてはいかがですか。」で大体話はまとまる。
私の趣味かもしれないが、昔の振袖は良い物がある。今成人式で着られている振袖は貸衣装が多く、私には受け入れられない振袖が多い。そんな中に有って、昔の振袖を見るとホッとする。とても捨てるのを薦める気にはなれない。
女の子がいる場合、大抵それで納得してもらえる。今の子どもは背が高く手も長くなっているので寸法を心配される方もいるが、解いて仕立て直せば十分に対応できる。
できれば、今解いて洗っておいた方が良い。子供が成人式の時に間違いなく着るのであれば、シミや汚れも完全に落としてしまっていた方が良い。
女の子供さんがいらっしゃらない場合でも、やはり振袖は採って置くのを薦めている。娘さんの振袖であれば、せいぜい20~30年前の着物である。30年前の着物と言えば洋服と違って古くはない。流行遅れもない。やはり捨てるのは忍びない。
「思い出の振袖でしょうし、曾孫さんがお召しに成るかもしれませんから。」
とお勧めする。振袖用の立派な袋帯を見れば誰しもそう思う。後々着る着ないにかかわらず採って置くのが良いだろうと思う。長期間の保存になるので、解かないまでも洗ってしまっておくことをお勧めする。
つづく