全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-50 着物の処分・箪笥の整理(その5)
➁ 黒留袖、黒紋付
箪笥の中を見ると、黒留袖、黒紋付(喪服)が仕舞われているケースが多い。どちらも式服として着物を着ていた時代には必需品であった。娘が結婚する時に着た黒留袖、またその先代が着た黒留袖も仕舞われている場合がある。黒紋付も同じである。昔は故人を送る時には必ず黒紋付を着た。そんな訳で箪笥の中に黒留袖、黒紋付が仕舞われている。
どちらも式服なので、度々着る着物ではないし、そうかと言ってぞんざいに扱う着物ではない。いずれも大切に保管されている。
それらを処分するか否か。それを判断するのには、まず第一に保管状態である。古い着物であればあるほど保管状態を良く見なければならない。
中にはとても古い留袖が出てくることがある。昭和初期の物になると、留袖の元祖である江戸褄と呼ばれるものである。江戸褄は裾模様が小さく染められているだけで、現在の留袖のような迫力はない。それだけで、これからその留袖を着る人はいないように思える。そして、その頃の留袖に限らず着物は生地が弱っていて仕立て替えに耐えられない。
そう言った留袖は仕立替えをお勧めしない。しかし、私にとってはとても貴重な着物に思えるが、持ち主にとってはそのような感情を持つか持たないかは別問題である。
「今ではとても貴重な留袖ですが、仕立替えはできません。先代か、あるいは先々代の遺品と思いますので、どうなされるかはお決めください。」
となってしまう。
比較的新しい留袖の場合、保管状態によっては、変色していたりカビが浸透しているものもあり、染抜きや洗い張りをしても治りそうもない場合は処分を薦めている。
仕立替えにも耐えられそうな留袖があっても着る人がいない。留袖は、その単体で仕舞われていることは少ない。大抵襦袢と袋帯がセットになって仕舞われている。その場合、次の様にアドバイスしている。
「せっかく残していただいた黒留袖一式です。直ぐに着る人はいらっしゃらなくても、お嬢様の子供さんが結婚される時、ひょっとして必要になるかもしれませんから。また、一式新調するとなると大変ですから。」
と、処分しないようにお勧めしている。
娘さんが次世代に黒留袖を着るか否かは分からない。それでもアドバイスしたように、丸々一式揃えようとすると金額的にも大変な事もあるが、私としてはやはり着物は大切に扱っていただきたいと言う気持ちもある。全ての着物を採って置くのは難しいけれども、先代の思い入れのある式服一式位は残していただきたいのである。
つづく