明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-52 環境問題ときもの

ゆうきくんの言いたい放題

 先頃、ジョーバイデン氏がアメリカ第46代大統領に就任した。アメリカファーストを自認するトランプ前大統領との選挙戦は、これまでにない話題を振りまきながらの戦かいだった。選挙の争点は、極端なアメリカ第一主義と世界のリーダーとしてのアメリカを取り戻す戦いの様にも見えたけれども、環境問題が深く関係していたようにも思える。

 トランプ大統領は、パリ協定を離脱し国内産業育成の為、化石燃料の使用を躊躇なく進めようとしていた。環境政策を問題視する若者は、当初サンダース氏を民主党の候補者に押していたが、最終的にその票をバイデン氏が取り込み当選したように見える。

 アメリカ大統領選挙を見るまでもなく、環境問題は今世界中の関心事である。

 最近は、昔はなかったような破天荒な天気に遭遇する。とんでもない大雪が一度に降る。集中豪雨が洪水を起こす。昔は夏に40度を超すことはなかったが、最近では珍しくはなく、毎年最高気温を更新している。

 それもこれも、地球が温暖化して南極や北極、グリーンランドの氷が解け、水面が上昇していることに関係があると言われている。地球温暖化をもたらしているのは、人間が排出している二酸化炭素である。

 地球温暖化のみではなく、廃棄物による環境汚染も進んでいる。生活に便利なプラスチックの投棄により海洋汚染が進んでいる。マイクロプラスチックと呼ばれる微細なプラスチック片が海洋生物を汚染し死に至らしめる。そのとばっちりは、いずれ人間にも及ぶのだろう。

 さて、着物の話題とは随分ずれてしまったが、こうも環境問題が深刻になって来ると、私の生業である着物と環境問題を重ねて見てしまう。
「着物は環境にとって有害か?」
と問われると、私は何とも答えられない。それは、その問いの主語が「今の着物」としてしまうと首をかしげてしまうのである。しかし、今の呉服屋の立場を離れ、着物研究者の仮面を被り、大学の教壇にでも立とうものなら、はっきりと「着物は日本の伝統が生んだ環境にやさしい」と言う事ができる。

 江戸時代、日本は完全循環社会だったと言う。

  掛けた茶碗は修理して使う。断片を漆で貼り合わせた。これは金と漆で名碗を修理する「金継」とよばれる技法に繋がっている。

  丈夫な和紙は、使った後二次素材として使われた。漆張りの葛籠(つづら)の下貼りに使われた。襖の下地にも使われていたと言う。古くなって処分する大福帳は捨てられることなく使用された。

 江戸時代は、捨てるものが全くないと言える程物は循環利用された。日本語の「もったいない」は、物を大切にする庶民の心から生まれた言葉なのだろう。

 着物もご多分に漏れない。一度織られた生地は徹底的に使われた。

                                     つづく

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