全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-52 環境問題ときもの(その6)
着物は環境にやさしい。流行に左右されずに長く着る事ができる。着古して破れたり擦り切れたりしても補修できる。仕立替えすれば、他の人も着る事ができる。着物以外の物に仕立て替えも出来る、等々。そう言った洋服とは違う着物の良さを是非理解して頂き実践してもらいたいのである。と私は着物を着る方々に主張したいのだが、ここで問題が起きる。
「そんなに着物を大切に、長く着られると呉服屋の商売が成り立たない。」
同業者、業界からそういう批判が聞こえてきそうである。
結婚式があっても、新しい留袖や訪問着は新調せず、家にある物を仕立て替える。成人式は母親が来た振袖を仕立て替える。お茶の稽古で着る着物は、先輩弟子から貰った着物を仕立て替えて着る。色無地は派手になれば染替えて仕立て直す。
そう言った手法は着物においては技術的に充分対応できる。しかし、新品の需要が減れば、呉服屋、問屋、染屋の仕事が無くなってしまう。振袖を創っていた染屋は店を畳まなければならなくなるかもしれない。呉服屋や問屋も着物が売れなくなり、やはり店仕舞いを余儀なくされるところも出てくるだろう。
環境にやさしいと言う着物の良さをアピールする事と呉服業界の盛衰は相反するようにも思える。しかし、此の問題は今冷静に考えなければならない。
まず言える事は、呉服業界は本当の需要に応えてきたのかどうかを問い直すことである。
戦後、タケノコ生活を脱し生活が豊かに成り出した頃、女性は競って着物を買いそろえた。消費者の欲求に応えて呉服業界は拡大した。しかし、生活の洋風化もあり、次第に呉服の需要は減少した。その時、呉服業界は本当の需要を無理やり維持しようとしたことのツケが今日まで周って来ている。
消費者の本当の需要に応えていれば業界の縮小は阻止できなかった、あるいはもっと縮小したかもしれないが、今はもっと健全な業界になっていただろう。やり方はあったはずである。
呉服屋(小売屋)が環境にやさしい着物の特徴を消費者に知らしめ、その為の知識・技術を磨いていれば仕立て替え等メンテナンスの需要はもっと掘り起こせただろう。新品の着物の売上よりもメンテナンスの売上が多くなっていたかもしれない。
そう言った努力により、着物の需要、特に普段着の需要はある程度維持できたかもしれない。「着物は高い」と言うイメージだけが消費者に伝わり、着物を敬遠されている向きも感じられる。
「着物は高い」と言うイメージは、むしろ呉服業界が消費者に植え付けてきたようにも思える。環境へのやさしさを消費者に十分に啓蒙し、それを実践すべきであったのに「着物は高くて当然」と吹き込んで高額な着物を消費者に押し付けてきたように思う。
今からでも遅くはないから、消費者に着物の本当の良さを知ってもらう事が大切である。
つづく